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(本の感想)生産性 マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの 伊賀泰代さん

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■著者について

伊賀泰代さんは1993年から2010年まで、米国系のコンサルティングファームであるマッキンゼー・アンド・カンパニーの日本支社に在籍し、前半はコンサルタントとして後半は人材育成を担当するマネージャーとして合計17年間努めていました。

 

■本書の概要

著者がマッキンゼー入社当初に海外メンバーの圧倒的な「生産性」の高さに何度も驚かされたそうです。それは単に「頭がよい」「仕事が速い」という話ではないと言っています。

やるべきことを明確にし優先順位が低いことは大胆に割り切りその働き方は、少しでも生産性を高めようという強い意志が感じたそうです。

「仕事のできる人」とは「生産性が高い人」のことであり「成長する」とは「生産性が高くなる」ということを意味しています。

本書では「生産性」とはどのようなことかと「生産性」をどのように高めるかを分かりやすく解説しています。特に日本と海外の生産性の違いについて記載されており働き方について考えさせられる一冊になっています。

 

■本の感想

1.生産性の高い採用とは

①生産性の高い採用とは何か?

まず、序章として採用を例に上げて生産性の高い採用とはなにか?と問いかけています。たとえば「出来るただけ多くの応募があること」「内定者が全員入社してくれること」など「理想的な採用」のイメージが浮かびますね。

著者は生産性という観点に絞ってみれば企業にとって最も生産性の高い状況とは「最終的に入社する10人だけが応募してくる」ことだと言っています。

もちろん現実的にそんなことはありえません。しかしこれが目指すべき方向性だと理解しておく必要があります。

逆に「とにかく応募者を増やす」という方法は生産性という観点からみれば最も避けるべき方策です。この問題点は「採用人数を増やすためには、応募人数を増やすしかないと思い込んでること」つまり生産性を上げるという発想がないことです。これは「ある仕事を仕上げるためには50時間必要だ。したがって10倍の仕事を仕上げたいなら500時間の労働時間が必要になる」というロジックと同じです。このような考え方には生産性の概念が完全に欠如しています。

 

②経営者の見えという大問題

量頼みの発送に加え、もうひとつ採用の生産性をさげてしまう理由として経営者の見えの問題があります。

「ライバル企業の説明会には1000人の学生が集まったらしい。うちの説明会は300名しか集まっていないのか?」

このような文句を言う役員やその役員を説得できない人事部門が存在するために、採用の生産性が下がってしまうのです。

本来、経営者は人事部に「なぜ、10人を採用するために、1000人も集めなければならないのか?」「1000人ではなく500人から10人を採用できるようにどんな施策を打ったのか?」と採用の生産性を問うべきなのです。

 

2.生産性向上のための4つのアプローチ

①生産性を上げるふたつの方法

生産性は「成果物」と、その成果物を獲得するために「透過された資源量」の比率として計算されます。「アウトプット」÷「インプット」といってもよいでしょう。

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生産性を上げるふたつの方法は成果額(分子)を大きくすること、そしてもう一つが投入資源量(分母)を少なくすることです。

先に書いた生産性の定義にもあるように投入原資(残業など)を増やせば生産性はさがります。なぜなら残業は時給が高いし、長時間労働は当然として生産性を下げます。生産性を上げるには「成果を上げる」と「投入原資を減らす」というふたつの方法があると理解した上で安易に投入原資を増やさないこと、そしてコスト削減だけでなく付加価値を上げる方法も併せて考えることが必要なのです。

 

②改善と革新

生産性を上げるには「成果を上げる」と「投入原資を減らす」にはさらにそれぞれを達成する手段として改善と革新というふたつのアプローチが存在します。つまり生産性をあげる方法は全部で4種類となります。

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③4つの方法についての事例

アプローチ1

改善による投資資源の削減

作業手順を変更したり無駄な作業を省いたりして働く環境を整えて作業効率を上げること

 

アプローチ2

革新による投資資源の削減

ロボットの導入などによる組み立てプロセスの自動化などイノベーションによる改善

 

アプローチ3

改善による付加価値額の増加

聖籠現場なら作業員の研修を行ったり、ベテランの技術を新人に伝授することで付加価値の高い製品を作れるようにするいったこと

 

アプローチ4

革新による付加価値額の増加

科学メーカーや素材メーカーが新たな機能を持つ新素材を開発し、圧倒的な付加価値の向上を達成して生産性を上げる例が日本でも多く起こっています。

最近ではIPS細胞など付加価値額の桁違いの向上が起こることを指しています。

 

〈生産性をあげる四つの方法〉

改善→インプルーブメントにより、投資資源を小さくする

革新→イノベーションにより、投資額を小さくする

改善→インプルーブメントにより、成果を大きくする

変革→イノベーションにより、成果を大きくする

日本では「生産性を高めるのは製造部門だけ」「生産性を高めるにおこなうのはコスト削減のみ」ということが多くその考えでは世界と対抗するのは不可能です。図5

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3.ビジネスイノベーションに不可欠な生産性の意識

イノベーションと生産性の向上は両立しない」という誤った考えも組織全体に生産性の概念を普及させる大きな障害になっています。

生産性の向上に無関心な企業が次々とイノベーションを起こせるとは思えません。組織全体が生産性の向上に意識的になることこそがイノベーションを生み出しやすい組織風土を作るのです。

 

生産性向上へのプロセスは下記の通りとなります。

①提携オベレーションの生産性の向上

②余裕時間を生み出す

③余裕時間をイノベーションのために投資

イノベーションによる大幅な生産性の向上

 

ビジネスイノベーションを起こすには社員に「問題認識力=課題設定料力」と「その問題を一気に解決したいと言う強い動機付け」を持たせることが不可欠になります。そのために大きな役割を果たすのが「生産性という概念を日常的に、強く意識させておくこと」なのです。

 

4.量から質の評価へ

会議の時間短縮は正しい目標ではありません.

海外のジョークには「日本人は会議の開始時刻には厳密だが終了時間には極めてルーズだ。しかも誰もそのことを悪いと思っていない。開始時間にルーズなイタリア人と、終了時間にルーズな日本人は何の違いもない」ということさえあります。

大事なのは会議の時間を短くすることではなく、会議の質をコントロールすることなのです。

同じく残業規制も量のコントロールにすぎません。

残業を減らそうとする運動は、残業が目標数まで減ったところでゴールに達してしまうのに対して、生産性向上の取り組みはエンドレスに続けられます。だから残業を減らすことだけを考える企業と、生産性を高めようとする企業では長期的に到達できるゴールは全く違ってしまいます。

「できるまで頑張るべき」=「高い成果さえ出せば、投入時間がいくら長くても問題ない」という考え方は根強く残ってしまいます。

上司は部下に「資料はよくできている。素晴らしい。ところでこれは、いったい何時間かけて作ったんだい?」と問うべきなのです。

 

そもそも「成長する」とは「生産性が上がる」ということなのです。

生産性が上がるとは

①今まで何時間もかかっていても出来なかったことが出来るようになった。

②今まで何時間もかかっていたことが1時間で出来るようになった。

③今まで1時間かかって達成していたことが1時間で出来るようになった。

④②や③で手に入った時間が、別の「今まで何時間かけてもできなかったこと」のことに使われ①に戻る

というサイクルが繰り返されることです。

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5.マッキンゼー流 会議の進め方

前述したように、コントロールすべきは量でなく質であり、生産性です。そして生産性を上げるにはインプットよりもアウトプットを高めるという方法があります.これを会議に当てはめると「今は会議時間を短くすることが大切なのか、それとも会議の成果を高める方法を考えるか」という視点が生まれます。

 

①達成目標を明確にする

会議の生産性を高めるには「最初にアウトプットを具体的にイメージする」ことが有能です。ちなみに大半の会議の達成目標は次の5つのどれかです。

1)決断すること

2)洗い出しをすること(リストを作ること)

3)情報共有すること

4)合意すること=説得すること=納得してもらうこと

5)段取りや役割分担など、ネクストステップを決めること

 

②会議は説明させない

会議の中で最も生産性が低いのは資料を用意した人がその資料を説明する時間です。実はマッキンゼーの社内会議では多くの場合、資料の説明は行われないそうです。会議の資料はたいてい2分もあれば目を通すことができます。10分かけて作成者の説明を聞くのに比べて5倍も生産性が高くなります。

著者はマッキンゼーに入った時に資料の説明をさせてもらえないことに対して「せっかく作ったのに・・」と残念に感じていたそうです。つまり会議で資料作成者に説明時間を与えるのは、その担当者への「ご褒美」なのです。その思考が2分で済む資料に10分をかけることを許すのです。

 

③意思決定のロジックを問う

会議では「組織としての意思決定」が必要です。結論ができなままに終わってしまった会議で「なぜ今日の会議では結論が出せなかったのか」を記録しておくだけでも、今後の会議の生産性を上げるヒントが得られます。

〈会議で決めるべきことが決まらない主な理由〉

1)社長や本部長など、意思決定者が会議を欠席した

2)意思決定のロジックが明確でなかった

3)データが資料がそろっていなかった

4)会議の主催者が「決める」ことにリーダーシップを発揮しなかった

ここで特に注目したいのが2)と2)の理由です。

意思決定に必要なのは「ロジックと情報」です。しかし、多くの会議では「今回、結論が出なかったのは情報が足りなかったからだ」とされています。しかし、それらの中には「実は足りなかったのはロジックであった」という会議が沢山あります。ロジックが足りないのに「情報不足で意思決定ができなかった。なので次の会議までに情報はを集めよう」という話にしてしまうと何度会議を開いても何も決まりません。

 

つまり、意思決定のロジックを合意しておけば、会議をやり直す必要はないのです。

また、意思決定が必要なタイミングで「場合による」と答えを返してくる人には「どういう”場合”ならイエスという判断になるのか?」と「場合による」”場合”を明確化させます。

 

4.評価について

立場上、会議を主催する人は、定期的に過去の「会議の評価」をしてみることをおすすめします。

まずは、カレンダー上に残る過去の会議を振り返りながら、書く会議について、その成功度合いを%で評価します。5つの議案があり、すべてにおいて目標が達成されたら100%の成功、3つしか決まらなった場合60%といった場合です。

次にそれぞれの会議の成功具合を10%上げるには、何をしておけばよかったのかと考えます。「あの議論を途中で打ち切っておけば、残りの議題にも十分な時間が伝えたはず」などの具体的な改善策を頭に浮かべておけば次回からの会議に活かせるからです。

生産性とは、そういった試行錯誤を通して、少しずつ上げていくものです。

 

5.最後に

急成長を続ける企業では長時間労働が常態化していることも多く、生産性への意識が低くなりがちです。

しかし、同じように全員が遅くまで忙しく働いている会社でも、その実態はふたつに別れます。ひとつは「生産性が低い人が仕事に忙殺され、忙しく働いている会社」もうひとつは「生産性が高い人が長時間働いているハイパワーな会社」です。一見するとどちらも「全員が長時間働いている忙しい企業」に見えますが、それぞれの起票が達成できるレベルには大きな差が生まれてしまうのです。

日本の企業と世界との差はふたつだけです。

「生産性とリーダーシップ」本書は生産性に特化して記載されていますので前書の「採用基準」についても今後、感想を上げていきたいと思います。