kazuのブログ

日頃の思いを書いていきます。

異動の目的共有と信頼関係の重要性  #人事異動 #人事

人事異動を伝える際の目的の共有と信頼関係の重要性

こんにちは、今回は、人事異動を伝える際の目的の共有と信頼関係の重要性について書いてみたいと思います。人事異動は組織にとって大きな課題であり、社員のモチベーションやパフォーマンスに影響を与えるものです。そのため、人事異動を伝える際には、目的の共有と信頼関係を構築することが重要だということをお伝えしたいと思います。

人事異動を伝える際のポイント

人事異動

人事異動を伝える際には、新しい部署で新たな仕事にやりがいを持ってもらえるように伝えることが大切です。今までの仕事ぶりや新たな部署での役割など、予め伝えることが必要です。あらたな部署における仕事の目的を知った上で取り組むことと、知らずに取り組むことでは、モチベーションはもちろん、成果にも差が表れてくるでしょう。説明に納得して異動するかしないかで今後の会社や職場に対する信頼関係にも大きく影響します。

人事異動を伝える際には、以下の3つのポイントに注意してください。

  • 目的の共有: 新しい部署での仕事の目的や意義を明確に伝えることで、社員にやりがいや責任感を持たせることができます。また、組織のビジョンや戦略に沿った人事異動であることを示すことで、社員の納得感や理解度を高めることができます。
  • 信頼関係: 人事異動は社員にとって大きな変化となります。そのため、社員の不安や疑問に対して、丁寧に説明し、聞き入れることが重要です。また、異動後のフォローアップやサポートを約束することで、社員の安心感や信頼感を高めることができます。
  • フィードバック: 人事異動を伝えた後には、社員の反応や感想を聞くことが大切です。社員の意見や要望に対して、できるだけ応えることで、社員の満足度やモチベーションを高めることができます。また、社員のフィードバックを参考にして、人事異動のプロセスや方法を改善することで、組織の効率性や品質を向上させることができます。

人事異動ができる組織のメリット

人事異動ができる組織には、以下のようなメリットがあります。

  • 人事育成: 人事異動を通じて、社員は様々な部署や職務に携わることができます。これにより、社員は自分のスキルや知識を広げることができます。また、社員は異なる環境や人との関わり方を学ぶことができます。これらの経験は、社員の成長やキャリアにとって有益です。
  • 組織の活性化: 人事異動を通じて、組織に新しい風を吹き込むことができます。社員は新しい部署やチームで新しいアイデアや視点を持ち込むことができます。また、社員は異なる部署やチームとのコミュニケーションや協力を促進することができます。これらのことは、組織の活性化やイノベーションを促進することにつながります。
  • 組織の柔軟性: 人事異動を通じて、組織は変化に適応する能力を高めることができます。社員は異なる部署や職務に対応することができます。また、組織は組織の構造やスキルセットを適切に調整することができます。これらのことは、組織の柔軟性や競争力を高めることにつながります。

人事異動ができない組織のデメリット

人事異動ができない組織には、以下のようなデメリットがあります。

  • 社員の離職や体調不良につながるリスク: 人事異動が行われない組織では、社員のストレスや不満から離職や体調不良につながるおそれがあります。
  • 異動後の業務に支障をきたす恐れ: 人事異動が行われない場合、社員は同じ職務を長期間担当することになります。しかし、業務の変化や新しいスキルの習得がないため、業務に対するモチベーションが低下し、パフォーマンスに影響を及ぼす可能性があります。また、異動が必要になった場合、社員は新しい業務に対応できないかもしれません。
  • 組織の活性化が阻害される: 部署やチームのメンバーが長期間同じメンバーで構成されていると、新しいアイデアや視点が生まれにくくなります。組織の活性化やイノベーションを促進するためには、異動を通じて新しい人材を導入することが重要です。しかし、人事異動が行われない場合、組織は既存のやり方に固執し、変化に対応できないかもしれません。
  • 組織の柔軟性が低下する: 組織が変化に適応できるかどうかは、柔軟性にかかっています。人事異動を通じて、組織の構造やスキルセットを適切に調整し、変化に対応できる体制を整えることが求められます。しかし、人事異動が行われない場合、組織は固定化された構造やスキルセットに依存し、変化に対応できないかもしれません。

人事異動ができない組織の理由

人事異動ができない組織には、以下のような理由が考えられます。

  • 優秀な人材の存在: 一部の組織では、特定の部署に優秀な社員が集まっていることがあります。これらの社員は、その部署での業務を非常に効率的にこなし、組織にとって重要な存在となっています。そのため、人事異動が行われない場合もあります。しかし、これは他の部署にとって不公平であり、優秀な社員の成長にも制限をかけることになります。
  • 他部署への引き取り手がない: 人事異動を行う際には、異動先の部署に引き取り手が必要です。もし他の部署に空きがない場合、人事異動が実施できないことがあります。しかし、これは組織のバランスや効率を損なうことになります。また、社員の希望や適性に合わない部署に留まることになり、モチベーションやパフォーマンスに影響を与えることになります。
  • 組織の文化や伝統: 一部の組織は、長期間にわたって同じ部署で働くことを重視しています。伝統的な組織文化や価値観に基づいて、人事異動を控えることがあるかもしれません。しかし、これは組織の変化や成長に対応できないことを意味します。また、社員の多様性や個性を尊重しないことになります。
  • 人事異動のリスク: 人事異動は、社員にとって大きな変化となります。そのため、社員のストレスや不満を最小限に抑えるため、異動を避けることがあります。しかし、これは社員の成長やチャレンジを阻害することになります。また、組織の変化に対応できない社員を生み出すことになります。
  • 適材適所の難しさ: 人事異動は、社員のスキルや適性を考慮して行うべきです。適材適所に配置することは簡単ではなく、組織全体のバランスを保つために慎重に判断されるべきです。しかし、これは人事異動のプロセスや方法に高いレベルの管理や判断力を要求します。また、社員の希望や意見との調整も必要です。

これらの理由により、人事異動が行われない組織も存在します。ただし、組織の成長や運営において、適切なタイミングで人事異動を実施することが重要です。

まとめ

人事異動を伝える際には、目的の共有と信頼関係の重要性について書きました。人事異動は組織にとって大きな課題であり、社員のモチベーションやパフォーマンスに影響を与えるものです。そのため、人事異動を伝える際には、目的の共有と信頼関係を構築することが重要だということをお伝えしました。また、人事異動ができる組織のメリットと人事異動ができない組織のデメリットと理由についても説明しました。

人事異動は、組織の変化や成長に対応するために必要なものです。しかし、人事異動を行う際には、社員の気持ちや状況を考慮することが大切です。社員にとって納得できる人事異動を行うことで、社員のモチベーションやパフォーマンスを高めることができます。また、組織の活性化や柔軟性を高めることができます。

 

 

 

人事考課とは?評価の目的と重要ポイントを解説! #人事 #評価

人事考課とは?評価の目的と重要ポイント

 

1. 人事考課とは

人事考課は、従業員の業績や能力を査定し、評価する制度です。主な目的は、公平な評価を行い、組織運営を円滑にすることです。以下に詳細を記載します。

 

1.1 公平な評価を行うため

人事考課は、従業員の業績や能力に対して公平な評価を行います。これにより、給与や昇進、部署配置などの処遇を決定する際の判断基準となります。従業員が納得できる公正な評価を行う必要があります。

 

1.2 従業員の能力を可視化し、組織運営を円滑にする

人事考課を通じて、従業員の業績や能力を可視化します。これにより、従業員の能力に見合った給与や賞与を適切に決定でき、人的コストの最適化につながります。また、組織運営を円滑に進めることも可能です。

 

1.3 従業員の成長を促し生産性を高める

適切な人事考課により、企業の生産性向上が期待されます。従業員が適切な評価を受けることでモチベーションが向上し、成長を促すことができます。

 

1.4 企業の方針や理念に基づいた行動指針を周知する

人事考課は、企業の方針や理念に基づいた行動指針を明文化し、従業員と企業の双方が目指す姿を共有する機会です。これにより、企業の団結力を強化できます。

 

2. 人事考課の重要ポイント

私は人事考課をする際に2つの重要なポイントがあると思います。

 

2.1 評価の一致

上司と部下の認識の一致と言っても良いかもしれません。自己評価と他者評価をできるだけ一致させることが必要です。自己評価が高すぎても低すぎても適切なチャレンジの阻害要因になりますので、人事考課での一致が大事になります。

 

2.2 成長目標の一致

査定時期の成長の曲線から来年度に向けての成長曲線の一致が重要になります。この成長曲線は上長が優秀であれば、あるほど自身の成長曲線を基準にしてしまうため、多くの方にとって厳しい設定になることがあります。その方が目標として可能な目標設定が大事になります。

 

. 人事考課の重要ポイント

人事考課の面談は、組織全体の効率と生産性を向上させるために重要な機会ですね。各管理者のパフォーマンスを評価し、個々の成長と開発をサポートすることで、組織全体の成功に貢献できます。

以下に、部下への具体的な質問例を20個ご紹介します:

1. 今年の業績評価は自己評価で何点ですか?

2. 今年設定した目標の達成度はどの程度ですか?

3. 目標達成に向けて何が最大の障害でしたか?

4. その障害をどのように克服しましたか?

5. 今年の業務で最も成功したと思うプロジェクトは何ですか?

6. その成功を可能にした要因は何だと思いますか?

7. 技術的なスキルや能力で今年最も成長したと感じる部分は何ですか?

8. その成長を支えた具体的な行動や習慣は何ですか?

9. チームとの協力で最も困難だった事例は何ですか?

10. その困難をどのように解決しましたか?

11. チームの中で最も協力的だったメンバーは誰ですか?その理由は何ですか?

12. 自己開発にどの程度時間を割いていますか?

13. 今年学んだ新しいスキルや知識は何ですか?

14. 来年に向けて学びたいと思っている新しいスキルや知識は何ですか?

15. 職場環境で改善すべきと思う点は何ですか?

16. その改善を実現するための具体的な提案は何ですか?

17. 業務プロセスで最も非効率的だと感じる部分は何ですか?

18. その非効率性を改善するための具体的な提案は何ですか?

19. 今年の業務で最も困難だったと感じる部分は何ですか?

20. 来年の業務で改善したいと思う部分は何ですか?

また、人材育成に焦点を当てた質問も重要ですね。部下の成長と開発をサポートするために、具体的な取り組みを検討していくことで、組織全体の成功に寄与できることを期待します。

チーム活性化のためのマネジメント

チーム

「人々が成長する機会が少なく、お互いに不満ばかりを言い合い、離職が多い職場は、マネジメントが適切に行われていないと評価されます。

私はこの人のマネジメントについて考えてみました。人のマネジメントをする目的は、人々を最大限に活用し、目標を達成することです。

この目的から、マネジメントが適切に行われている状態と行われていない状態を整理します。

マネジメントが適切に行われていない状態とは、人々が十分に活用されず、退職が続出する状況を指します。

一方、マネジメントが適切に行われている状態とは、職員一人ひとりが自分の役割を理解し、自分の仕事を遂行できている状況を指します。その結果、予期せぬ事態にも迅速に対応できます。

人を活かすとは何かというと、それは「適材適所」を実現することです。つまり、どのような役割があるのか、そしてその役割は職場の中でどのように機能するのかを理解し、それに基づいて人々を配置することが重要です。

多くのマネージャーはプレイングマネジャーであり、選手であると同時に戦略の指揮官でもあります。この二つの役割を放置してはならず、指揮官としての役割は、仕事の詳細やシフトを把握することが重要です。

仕事を野球に例えると、少年サッカーから日本代表へと進むようなものです。

ロングボール作戦から戦術を使えるようになるためには、まず全員がピッチに立つことが必要です。マネージャーは監督であり、ポジションを与え、役割を説明し、良いプレーには「ナイスプレー」と声をかけます。攻めと守りは一体となって機能します。また、プレイングマネージャーとして、時には選手として輝くことも求められます。これが私が考えるマネジメントです。

マネジメントは、まず職員が適切にピッチに立っていることを確認し、戦略を与えることが必要です。

皆さんの部下はピッチに立たず観客席から見ているだけではないでしょうか?私も常にピッチに立っているか自分に問いかけています。

今回の記事を終わりにしますが、マネジメントの重要性とその実践方法について、皆さんが新たな視点を得られたことを願っています。

従業員成長と組織効率向上を実現する人事異動

皆さん、こんにちは!!私自身も管理職を10年程務めてきましたが、人事異動については時として後ろ向きな感情を抱くこともありました。しかし、最近では定期的な異動の重要性について新たな認識を持つようになりました。今日はそのことについて、自分の考えを整理する意味でも記述していきたいと思います。

人事異動

■人事異動とは 人事異動とは、企業が従業員を他の部署や役職、場合によっては他の地域や国へ移動させることを指します。これは組織の効率を向上させ、従業員のスキルを広げるための一つの手段です。人事異動は以下のような理由で行われます:

  • 業務の需要:部署やプロジェクトのニーズに応じて、特定のスキルを持つ従業員を配置するため。
  • 従業員の成長:従業員が新しいスキルを習得し、キャリアを発展させるため。
  • パフォーマンスの改善:従業員のパフォーマンスを向上させるため、または問題を解決するため。
  • 組織の再構築:企業の戦略的な目標に合わせて組織を再構築するため。 人事異動は、従業員にとっては新たなチャレンジとなりますが、同時にストレスを感じることもあります。そのため、企業は異動をスムーズに行うためのサポートを提供することが重要です。これには、適切なトレーニングやメンターシップ、そして十分なコミュニケーションが含まれます。また、異動が頻繁に行われる場合、それが組織のパフォーマンスにどのように影響を与えるかを評価することも重要です。これにより、企業は最適な人事戦略を維持することができます。

■人事異動がなぜ日本では嫌がる人が多いのか? 日本で人事異動が嫌がられる理由はいくつかあります:

  1. 専門スキルの習得が難しい:頻繁な異動により、専門的なスキルや知識の積み上げが難しくなることがあります。
  2. 従業員の負担:異動先で求められるスキルや知識の習得、人間関係の構築などが精神的負担となる可能性があります。
  3. 異動の不確実性:異動の決定は上層部の意見が大きく影響し、従業員自身の希望が必ずしも反映されないことがあります。
  4. 生活環境の変化:異動が地域をまたぐ場合、家族や生活環境への影響が大きいです。 これらの理由から、人事異動は従業員にとってストレスを感じる要因となることがあります。しかし、企業側から見れば、人事異動は組織の効率化や人材育成のための重要な手段であり、このバランスをとることが求められます。また、最近では「ワーク・ライフ・バランス」の観点から、育児や介護など家庭的責任を負う従業員に対する配慮も求められています。このような社会的要請に対応するため、企業も人事異動の方法を見直す必要があるかもしれません。

上記から思うこと 本来、異動は会社にとっても従業員にとってもWin-Winの状況を作り出すべきです。しかし、そのようになっていない現状は、人事異動が嫌がられる理由に記載した通り、従業員がリスクに対してメリットを感じないからではないでしょうか?

 つまり、人事異動がパフォーマンスが低い社員の横流しになってしまっている場合、異動自体がその対象社員だけでなく、会社全体に対しても良い印象を持たせなくなってしまいます。その上、本人にも新たなストレスがかかるので、結果としてマイナスな印象になってしまいます。これを変えるには、パフォーマンスが低い社員の横異動は止めて、優秀な社員の異動のみにするべきです。

 これは理想であり、現実ではかなり難しいですが、考え方としては重要だと思います。

(本の感想)後編 僕はやっと認知症のことがわかった 長谷川和夫

f:id:kazu0000:20210304223637p:plain

 

この記事は後編ですので前編は下記からどうぞ

 

kazu0000.hatenablog.com

 

 

■本の感想

5.治る認知症

f:id:kazu0000:20210313140915p:plain

現在、認知症を治す薬はありません。しかし、早期診断によって「正常圧水頭症」のように、治る可能性がある認知症では早めに治療を始めることができます。

また、早期診断により、記憶が失われたときに備えて、自分が今後どう生きたいのか、判断がしっかりしているうちに、いろいろと準備をしておくことも出来ます。ショックで知りたくないという方もいるかもしれませんが、やはり早めの診断をおすすめします。

また、上記のガイドラインに記載しているような病気と間違えられることも多くあります。認知症の診断は難しく、うつ病と間違われたり、せん妄などと間違えられることもあります。高齢者はたくさんの薬を処方されがちですから、薬の副作用によって認知症に似た症状が引き起こされることもありえます。間違った診断をされて治療が違った方向に進まないためにも、早めに専門医の診断を受けることをおすすめします。

 

6.診断の流れ

認知症を担当する科は、精神科、脳神経外科などがあり「物忘れ外来」「メモリークリニック」などと謳っているところもあります。診断の流れが下記のとおりです。f:id:kazu0000:20210313142500p:plain

問診→心理検査(MMSEや長谷川式スケールなど)→臨床検査(CTやMRIなど)→血液検査など、これらの検査から総合的に判断し、診断結果が告知されます。

認知症になる危険因子としてもっとも大きいものが、年をとることです。年齢が上がるにつれて認知症の有病率がぐんと高くなります。70代前半では3%台だったのが80代後半になると40%を超え、90代以上では60%を超えます。

 

7.認知症になってわかったこと

先生が認知症になってわかったことに、認知症は「固定されたものではない」ということが記載されている。先生の場合は朝が調子がよく夕方になると疲れてきて自分がどこにいるのか、何をしているのかが、わからなくなっていくとおっしゃっています。

先生自身も認知症になったらその症状は不変的であると思っていたそうで、これほどよくなたり、悪くなったり、グラデーションがあるとは考えてもいなかったそうです。

また、認知症の人と接するときに心に留めておいて欲しいこととして「時間を差し上げる」ということ上げています。まず、相手のいうことを聴いてほしい。「こうしましょうね」「こうしたらいかがですか?」などと、自分からどんどん話しを進めてしまう人がいますが、認知症の人は戸惑い、混乱して、自分の思ったことをいえなくなってしまいます。その人が話をするまで待って注意深く聴いて欲しい、きちんと待って、じっくりと向き合ってもらえると安心するとのことです。

認知症の人はそれぞれ別の人で当たり前に全員が違います。みんな違ってみんな尊い存在であることを忘れないでほしいと思います。そこに尊厳が生まれるのです。

 

8.騙さない

認知症の方に接するときに心得として「騙さない」ということを挙げています。先生の現役のとき、相談されたことのひとつに、認知症の診断を受けさせたいが本人に対してどう言えばよいのか?というものがありました。嘘をついて、騙して受診させるケースもあるようですが、先生はそのようなことに反対をしています。「相手は認知症だから大丈夫だろう」と、認知症のことをよく知らない人は思いがちですが、そうではありません。何となくおかしいということや、尊厳をもって扱われていないことは、認知症になってからもわかります。先生は本書で何度も「認知症だからといって色眼鏡でみないで、普通に接して欲しい」といっています。

 

9.薬の副作用

認知症の薬に関して、症状を緩和し、抑制する薬はできましたが、発症前の状態に戻す治療薬はまだありません。

脳血管性認知症を除くと、アルツハイマー認知症を代表とする認知症の大部分は、「アミロイドβ」や「タウ」などと呼ばれる特定のタンパク質が脳内に異常に蓄積し、脳神経が死滅することで発症すると見られている。そのため、この特定のタンパク質が脳に蓄積しないようにする薬剤の開発が行われ、有望な薬もあったが、効果が明らかにできず、これまでのところは開発中止が相次いでいる。

 

10.美しいもの

先生の1日は、日めくりカレンダーをめくることから始まるそうです。それから朝食、そのあとは理容室に行ったり、週に1度のデイサービスにも行くほか、リハビリの人が家に来てくいれたり、自分でマッサージを受けに行ったりすることもあるそうです。

午前中はいいけども午後になると疲れて、もやもやしてくるそうです。買い物のお金を払ったのに忘れてしまったり、意図していないことを喋って、後でしまったと思ったり、老いと認知症の両方で正直、情けなさやもどかしさを感じることも沢山あるそうです。

しかし、認知症になっても、嬉しい、悲しいといった喜怒哀楽の感情は最後まで残ると言われています。実際に認知症になってみて、その通りだと思ったそうです。たとえ症状が進んでも、できるだけ美しいものを観たり、聞いたり、味わったりして過ごしたいとおっしゃっています。

 

11.最後に

長谷川先生の印象に残った言葉に

認知症の本質は、暮らしの障害なんだよ」

という言葉があります。まさにその通りだと思います。

また、薬の副作用についても、認知症薬の治験統括医師まで勤めた人が、そのような見解を持っていることに驚きました。認知症の第一人者が認知症になって感じることをとても丁寧に解説してくれている一冊になっていますので、認知症になった人やその家族、認知症に関わる全ての人に読んでもらいたい一冊になっています。

 

(本の感想)前編 僕はやっと認知症のことがわかった 長谷川和夫

f:id:kazu0000:20210304223637p:plain

 

■著者について
●長谷川 和夫:1929年愛知県生まれ。53年、東京慈恵会医科大学卒業。74年、「長谷川式簡易知能評価スケール」を公表(改訂版は91年公表)。89年、日本で初の国際老年精神医学会を開催。2004年、「痴呆」から「認知症」に用語を変更した厚生労働省の検討会の委員。「パーソン・センタード・ケア」を普及し、ケアの第一人者としても知られる。現在、認知症介護研究・研修東京センター名誉センター長、聖マリアンナ医大名誉教授。認知症を描いた絵本『だいじょうぶだよ――ぼくのおばあちゃん――』(ぱーそん書房)の作者でもある。

●猪熊 律子:読売新聞東京本社編集委員。1985年4月、読売新聞社入社。2014年9月、社会保障部長、17年9月、編集委員。専門は社会保障。98~99年、フルブライト奨学生兼読売新聞社海外留学生としてアメリカに留学。スタンフォード大学のジャーナリスト向けプログラム「John S. Knight Journalism Fellowships at Stanford」修了。早稲田大学大学院法学研究科修士課程修了。著書に、『#社会保障、はじめました。』(SCICUS)、『社会保障のグランドデザイン』(中央法規出版)などがある。

 

■本の概要

「長谷川式簡易知能評価スケール」という言葉は介護・医療従事者の方や認知症家族を抱える方なら一度は耳にしたことがあるでしょう。それほどに有名な認知症の評価指針を作った著者自身が認知症になり自らが認知症となったことでわかった事を専門知識も交えて書かれています。認知症を学びたい人もまた、認知症になった方も是非、読んでいただきたい一冊となっています。

 

■本の感想

1.初めに

皆さんは「長谷川式簡易知能評価スケール」と言う言葉を聞いたことがあるでしょうか?「今日は何年の何月何日ですか?」「100から7を引いて下さい」等の検査をして認知症かどうか「診断の物差し」として日本中で広く使われている認知機能検査が長谷川式スケールでこれを開発したのが著者の長谷川和夫さんです。

そんな長谷川さん自身が認知症になりました。認知症であると自覚して発表したのが2017年7月、88歳の時です。認知症は、言語や知覚に関する脳の機能低下が成人になってから起こり、日常的に生活に支障をきたしている状態をいいます。

ちなみに厚生労働省によると「団塊の世代」が全員75歳以上となる2025年には約700万人が認知症になると推計されています。「認知症は誰もが向き合うものですよ、むやみに怖がることはありませんよ」ということが伝えたくて思い切って公表したそうです。

著者が実際に認知症になってみて実感したことは、認知症は一旦なったら固定したもののように思われがちですが、そうではないということです。例えば著者の場合は、朝起きた時は調子が良いけれど、だんだん疲れてきて混乱がひどくなる。でも一晩寝るとスッキリして、またフレッシュな新しい自分が蘇ります。だから「一度なったらおしまい」とか「何もわからない人」などど思わないでほしい、特別扱いしないで頂きたいとおっしゃています。

 

1、認知症になってショックだったか?

この質問はよく聞かれる質問だそうです。

この質問に対して以前に体験した話を書いています。ある日、認知症と診断された男性が「セカンドオピニオン(別の医師の意見)」として尋ねてきたそうです。その男性は「先生、聞きたいことがあるのですが、質問していいですか?」とおっしゃりました。「もちろんです。どうぞ」と答えると「他の誰かじゃなくてなぜ自分がならないといけなかったのですか?」と聞いてきたのです。皆さんならどう答えますか?先生は答えられなかったそうです。何か話すよりも一緒に「悩みますよ」と伝えたかったので、その時にできたのは、その人の手の上に自分の手を重ねて「そうですねえ」といって握ることくらいでした。その男性は会社で重要な職についている方でしたので、その方からすれば「どうして私が何も悪いことをしていないのに「社会でそれなりの仕事をしてきた私がこの後に及んでなぜ?」という気持ちが強かったのでしょう。当時は認知症への理解が今よりも進んでいませんでしたから、相当ショックだったのでしょう。

一方で著者はどうだったのかというと「認知症になったてしょうがない」「年をとったのだから。長生きをすれば誰でもなるものだから、それは当たり前のこと」と思ったそうです。ショックでなかったかというと嘘になるけれど、なったものは仕方がないというのが正直な感想であると述べています。もちろん、もどかしい気持ちはあるそうです。今日が何月何日で、何曜日かもわからなくなるのですから当然です。認知症でいちばん多いアルツハイマー認知症は、一般的に、まず時間の検討がつかなくなり、次に場所の検討がつかなくなり、最後に人の顔がわからなくなると言われています。

 

2、晩節期の認知症

最初は自分ではアルツハイマー認知症ではないかと疑っていたようですが、専門病院で詳しい検査をした所、「嗜銀顆粒性(シギンカリュウセイ)認知症」であると診断がされたそうです。

※嗜銀顆粒性(シギンカリュウセイ)認知症は、脳をつかさどる部分などに嗜銀顆粒性という異常なタンパク質がたまることから、その名がついた。記憶障害以外の認知症機能の低下はあまり目立たず、怒りっぽくなる、頑固になるほか、不安や焦燥、躁鬱などの症状が見られる。確定診断には病理学的検査が必要であり、臨床診断は難しいとされる。

著者は80歳を過ぎての認知症を「晩成型の認知症」と呼んでいるそうです。これからこの「晩成型認知症」になる方が増えてきます。だから絶対に人ごとではないと思って認知症のことを知っておくことが大切だとおっしゃっています。

 

3、認知症の定義

認知症とは何かについて記載していきます。認知症とは「成年期以降に、記憶や言語、知覚、思考などに関する脳の機能の低下が起こり、日常生活に支障をきたすようになった状態」といわれています。つまり、認知機能に障害を負ってきた生まれつきでも、正常な老化の一部でもないということです。いったん正常に発達した神経細胞が、外傷や感染症、血管障害などのさまざまな病気や原因によって損なわれ、障害を受けた時に起こるものです。

認知症の特徴としては、次のようなことが上げられます。まずは、脳の器質的な障害であり、認知機能が低下していること。ここでいう「器質的な障害」とは、脳の神経細胞のつながりが働かなくなってしまうことを指します。脳の神経細胞は、複雑で精巧なネットワークを構築しているので、それが阻害されると認知機能は阻害されます。意識障害が無いことも特徴として上げられます。つまり、話しかけても返事がなかったり、意識が混濁していたりする場合とは区別されるということです。「せん妄」と呼ばれる軽い意識障害があると、物忘れと似たような症状を引き起こすことがあります。また、脱水症状や感染症、薬の過剰投与によっても、意識障害は起こりやすいので注意が必要です。認知機能の低下と共に、日常生活にも支障が生じていることも重要な特徴としてあげられます。日常生活に支障がある期間は一時的ではなく、継続しています。さらに脳の器質的な障害によって、それが引き金となり、感情や行動の面などでさまざまな変化が見られるという特徴があります。たとえば、ご飯を食べたのに、器質的な障害がある記憶障害によってそれを覚えることができず「ご飯をたべさせろ」と騒いだり、怒って暴力を振るうのは、器質的な障害に伴って起こる変化と言えます。このような、付随して起こる怒りや暴力、疑いなどの感情行動は「BPSD」と呼ばれています。

 

4、認知症の種類と特徴

f:id:kazu0000:20210305213909p:plain

アルツハイマー認知症

認知症というとアルツハイマー認知症を思い浮かべる人が多いと思います。アルツハイマー認知症はアロイス・アルツハイマー(1864から1915年)というドイツの精神科医が最初に症例を発表したために、その名をとって呼ばれています。

アルツハイマー認知症では、脳の神経細胞の外側にアミロイドβというタンパク質が付着した、老人斑と呼ばれるシミのような異常構造が多く見られます。老人斑ができたあとで、神経細胞の中に異常な線維が蓄積する神経原線変化と呼ばれる病理変化が見られ、神経細胞が死んでいきます。アミロイドβの蓄積が始まってから10年から15年以上かけて認知症はゆっくり進行していきます。だたし、アミロイドβが蓄積しても、認知症が発症しないこともあります。

アルツハイマー認知症になると、物忘れなどの記憶障害や、時間や場所などがわからなくなる見当織障害などさまざまな認知障害が起こり、生活に支障をきたします。時間をかけて徐々に進行し、重度になると自分でものを食べることや着替え、意思疎通などができなくなります。自分で座ることも不可能になり、寝たきりになり、最終的には意識が低下し、昏睡状態となって死を迎えます。今では認知症の6割は、アルツハイマー認知症といわれています。

 

②脳血管性認知症

以前、日本で多かったのは脳血管性の認知症でした。脳血管性認知症とは、脳梗塞脳出血など、脳の血管性の障害によって起こる認知症です。脳梗塞は脳の血管が詰まって一部に血液が流れなくなり、その部分の脳が動かなくなってしまう病気です。脳出血は脳の血管が破れて出血し、その部分の脳細胞が圧迫されて起こります。脳の血管が詰まったり出血すると、脳の細胞に酸素や栄養が送られなくなるため、細胞が壊れてしまい、本来、細胞が担っていた機能を失うことによって認知症が起こるのです。血管の病気を引き起こす主な原因は動脈硬化です。動脈硬化の危険因子として、高血圧、糖尿病、心疾患、脂質異常症、喫煙などがあります。

症状としては、記憶障害の他に歩行障害などが見られることが多くあります。排尿障害が一緒に起こることもあります。「感情失禁」といって、感情をコントロールできず、ちょっとしたことで泣いたり、怒ったりすることもあります。症状の現れ方が特徴的で、突然、症状が現れたり、落ち着いたと思ったら、急に悪化したりするとこもあります。女性よりも男性の方が多く症状しているといわれます。

 

レビー小体型認知症

 レビー小体とは、神経細胞に出来る特殊なタンパク質が大脳皮質や脳幹にたくさん集まり、神経細胞が壊されてしまうため、認知症の症状が起こるとされています。大脳皮質とは、何かを考えるときに中枢的な役割を担っている場所です。脳幹は、呼吸や血液なの循環などの人が生きるために欠かせない役割を担っています。レビー小体はパーキンソン病でも見られるため、似た症状が見られます。手が震える、動作が遅くなる、筋肉がこわばる、体のバランスが取りにくくなるなどです。そのため転倒しやすくなります。この認知症の特色として一番に上げられるのが「幻視」です。初期の段階では記憶障害よりも幻視の症状が見られるため、認知症と思わない方も多いようです。この認知症の方ははっきりとした幻視をみます。周囲には見えていなくとも本人には見えているのですからきちんと受け止めることが大切です。ちなみにレビー小体型認知症を明らかにしたのは日本の精神科医です。小坂憲司先生といいます。1976年に世界中に知られるようになりました。

 

④前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は、脳の前頭葉と側頭葉が萎縮し、血流が低下することでさまざまな症状が引き起こされる認知症です。

前頭葉は思考や感情の表現、判断をコントロールするとされ、人格や理性的な行動、社会性に大きく関係します。側頭葉は、言語の理解、聴覚、味覚の他、記憶や感情をつかさどっています。どちらも脳のたいへん重要な働きを担っており、昨日の低下は大きな影響を及ぼします。

この認知症の特徴は、人格の変化や常識から考えると疑問に思われる行動などです。実例として、公務員だった方が万引きをしてしまい、なぜそんなことをしたかを調べる過程で、その方が前頭側頭型認知症だとわかったことがあります。社会性が低下して問題が生じることが多いため、人々がこの認知症を理解してくれないと、本人も家族も非常に苦しむことになります。抑制が利かなくなる。同じことを繰り返すなどのほか、他者への共感ができなくなったり、感情移入ができるなったりするなど、感情が鈍くなどといった症状も伝えられています。65歳未満の方に比較的多いとされています。

 

ほかにも、認知症の種類や、認知症を引き起こす病気としては多くのものがあります。

今回は前編としてここまでの記載とします。

 介護・認知症関連の過去の記事についてもリンクを貼っておきます。

 

kazu0000.hatenablog.com

 

 

kazu0000.hatenablog.com

 

 

kazu0000.hatenablog.com

 

 

kazu0000.hatenablog.com

 

 

(本の感想)後編 介護再編 武内和久 藤田英明

f:id:kazu0000:20210216181715p:plain

この記事は後編になります。

前編は書きを御覧ください。

 

kazu0000.hatenablog.com

 7.2025年までに80万人確保という高すぎるハードル

つまり、現時点から70万人を増やさないといけない、推計当時のペースで行けば215万人までには増加するだろうと見込まれており、それでも38万人たりないということはすでに述べたとおりです。また、介護人材をめぐっては「とりあえず誰でもいいから人を集めたい」という議論と「質を担保されないと良いケアはできないのだ」という2つの議論が繰り返されています。この調子でいくと、思い切った打ち手なしには70万人を新しく雇い入れるということは出来ないのではないかと考えます。

また、国内でかき集めても到底見込みが立たないとの事で外国人が入ってくれば問題ないだろうという議論もあります。しかし、コミニュケーション能力が必要な介護の仕事は、工場ラインで回したり、コンビニでレジ打ちをしたり、ラーメン屋で注文を取ったりという仕事とはわけが違うということも理解しておかなければなりません。特に認知症の人の介護をする場合はコミニュケーションが欠かせないというより、一般の日本人よりも一段上のコミニュケーション能力が求められますから、介護の仕事は外国人にとってパードルが低くないのです。

一口に介護と言ってもサービスに濃淡があります。重度な障害があってほとんど医療に近い世界から、一緒に買い物に行ったり、調理をしたりといった生活支援まで非常に幅の広いものがあります。デイサービスでリクリエーションをするのと、特養でターミナルケア、見取りをするのでは全く別の仕事といって良いでしょう。そうであるのに介護という仕事を一括りに論じると実態が見えなくなります。

ここでイメージを持ってもらうため、大まかに主なサービス利用者の特徴を紹介してみます。

 

特別養護老人ホーム

要介護度  3ー5

年齢層   80歳以上

所得層   低所得者

医療依存度 軽〜中

 

②有料老人ホーム

要介護度  自立から5

年齢層   65歳以上

所得層   中〜高所得層

医療依存度 なし〜高

 

8.介護は奥深い難しい仕事

介護の仕事は基本的にコミニュケーション能力が絶対に必要な仕事です.認知症になった人や、脳梗塞で意思疎通が出来なくなった人など、また、それを支えている家族だったり、周囲の人だったり、精神的に負担を負っている人たちとのコミニュケーションをいかにとれるかによって、その成果が大きく変わってくる仕事です。介護は多種多様な価値観を背負っている人たちに対して、どのパターンにも適応しながら、ケアをデザインしていく高度に“知的”な作業です。その適応力こそが、単なる家族会ごとの大きな違いなのです。利用者の経歴や希望を網羅的に聞いていくと、その人の人物像が大体わかってきます。すると、その人に対してどういうケアが良いかの仮説が立てられます。そしてその結果どうがったかという振り返りを行いPDCAサイクルを回していくのです。これができる人が現場にいる必要があります。しかし、このPDCAを回すという発想が不十分な現場が多いのも事実です。介護の専門学校では「非審判的な態度」について学びます。要は介護をするとき、「あなたが良いと思うか悪いと思うかは関係ない」ということ。利用者家族の話を、それが良い・悪いという価値判断は別にして聞きなさいということです。そこから推測をして仮説を立て、プロファイリングして、その人物像を明らかにしていきなさいと習うのですが、大概の人はこれが出来ていません。自分のこうあるべきを持ち込んでしまうのです。現場経験が長い人ほどにこの傾向が強まります。こうなると、介護職の間で齟齬が生まれて「あなたの考えは間違っている」「あなたの方が間違っている」という、どこまでいっても平行線を辿るしかない議論に終始して人間関係が悪化します。介護職は実は高度な知性・感性と対人能力が求められるのです。エモーショナルな仕事のようで、本当は科学的であり、かつコミニュケーション能力が高くなければできないという、非常にハイレベルで知的な仕事なのが介護職であるといえます。医療の場合は、骨折であろうが、ガンであろうが、ある程度定型化された処置が行なえます。しかし、介護は特に相手ごとに配慮しなければならず、知性と感性、左脳と右脳が必要とされる仕事なのです。

 

9.介護はクリエイティブな仕事でもある

 著者の経営する介護施設の事例になります。もともと法人経営をしていた高齢男性のAさんは認知症になって、トイレも失敗してしまうし、奥さんに暴力を振るうこともありました。いろいろと試してうまくいったのは、その人の”尊厳”に訴えかけることでした。Aさんには、施設の名称が入った名刺を持ってもらい、営業先に一緒に回ってもらうことにしたのです。名刺には「最高顧問」と肩書を入れて「顧問、今日もよろしく御願い致します。」といってデイサービスの営業部門と一緒に営業先に同行するのです。すると本人的にも朝になると「出勤しなきゃいけない」という気になってお迎えの車を背広を着て待つようになりました。Aさんは認知症で3と4をいったりきたりしていたのですが、その後は要介護3で維持して症状も落ち着いてきました。失禁もなくなり、奥さんへの暴力もなくなりました。このように考えていくと施設に100人入居者がいたら、100人違うサービスをしなければなりません。ですから介護職は非常にクリエイティブな仕事なのだといえます。

 

10.介護職の質の良し悪しの見分ける困難さ

介護においても最も困難を極めるのが、介護では生活全般を見守っているため、本人の幸せな状態を追及していく点です。その点において、その「幸せな状態」がそれぞれ違うことが介護を一層難しいものにしています。ある人にとってはいいことも、ある人にとっては迷惑だったり、お節介に感じたりすることはよくあります。うな丼を食べたい人もいれば、ジャムパンでもいいという人もいます。同じ位の関わりをしても、ある人は「相手にしてくれなくて寂しい」と感じるでしょうし、ある人は「うっとうしい、少し放っておいて欲しい」と感じるでしょう。それにその人のすべて心地いい状態にするのが健康にいいかというと、それも違います。「ジャムパンだけ食べていけば幸せ」という人に毎食与えれば糖尿病にまってしまいます。「外出するのが億劫だから、毎日テレビだけをみて生活をしたい」という人の言う通りに生活をさせているとあっという間に寝たきりになってしまいます。

入居者の要望を聞くことは大事だけども、全てを聞いてはいけない。その判断をどのようにするかは専門的な知識が必要です。介護職にとって「能力が高い」とはどんなことを指すのか。これは非常に難しい問題です。逆にいえば評価のしにくさは、介護職の仕事の奥深さや幅広さを示しているともいえます。介護職にはコミニュケーションであったり、目配り、気配り、声掛けであったりとさまざまな要素があるので、それをどうやって評価するのか、例えば数字化するのかまったく確率されていません。そういう介護職の人々は、往々にして、精神論に走ってしまう傾向があるように思われます。よくあるのは、「きらきら介護」「ワクワク介護」「ありがとうと言われる仕事」というフレーズです。要するに「自分たちの仕事は感謝されることが報酬です。だから給与は高くなくて構いません」 といっているようなものです。向上心をもって介護職界の中で自分を高めようというより、現場に寄り添っているようなふりをして、より大きな責任を追わないでいることを選択しているのです。

介護福祉士の養成施設や研修制度など、様々な形で学ぶシステムはあるのですが、そうして学んだことと現場でのギャップが大きすぎて生かせない面があります。このギャップから働いてから学ぼうという気力が湧かなくなります。「学校でこういうことを学んだんですけど」と先輩に意見すると「若いのに小賢しいことを言うな」「うちはこういうやり方なのよ」と一括されて、心が折れてしまうということはよくあります。介護職で働く人は、専門性と高めていこうという人と、福祉なのだから安定してずっと給与を貰えるから働いているのだという人に分かれます。両者はまったく考え方が違うので、現実で衝突することになるのです。

f:id:kazu0000:20210227144155p:plain

職場を辞めた理由は、労働環境がそれなりに上位を占めているのですが、事業者のほうに理由がありそうな項目も入ってきています。「うちは利益を上げることが大前提」という事業所もあれば、「うちはとにかく利用者のためになることを極めるのだ」という施設もあります。いろんなパターンがありますが 事前に説明していなかったり、うまく浸透されていなかったりします。実際に採用するときも、何気ないパンフレットをポイっと渡したりするだけだったりします。人の採用の仕方を知らないだけなのか危機感がなさすぎるのか、どちらなのかだと思います。一方で、労働者側が入職する時に法人や事業者の理念や方針に共感下というのはほとんどありません。入るとき全然チェックしておらず、入ってみるとすごく不満に思ったという人も多いように思われます。どちらの努力も欠けているから、不幸な結婚のようになってしまっているのでしょう。

 

8.テクノロジーはどこまで代替可能か?

介護にテクノロジーを導入するとき、業界内部と外部の味方にスレがあります。外部には「介護は工場労働のようなもの」という味方を持っている人がまだいます。その根底には結局、簡単な仕事だとうという考えがあります。しかし、再三述べているように決して簡単な肉体労働ではありません。内部からのズレとしては、何故かテクノロジーを欲しがらない事業者が多いことが上げられます。欲しい場合の理由は、はっきりしていて、ひとつは人手不足とか、切実な業務の厳しさをそれによって緩和したいという場合です。もうひとつは、何となくたまっているイノベーションへの渇望、革新への願望があります。新しい要望があります。新しいムーブメントを起こしたいという思いが高じて、という場合もあると思います。そういう意味で、内部と外部でテクノロジーを巡る思考が微妙に交錯していて、まだ1つの線に結ばれていないのです。

しかし、今後はおそらく、必要性にかられて、テクノロジーはどんどん現場に入ってくるでしょう。介護職はそれでも最後まで残り続ける仕事です。大事なことは何のためにテクノロジーを使うかです。それには省人化・省力化という大きな目的があります。働く人の心身の負担を減らして、掃除と排泄ではどちらが優先かというと、当然ながら人の尊厳のほうが重要です。今まさに試行錯誤にとば口に入っているということが言えます。

 

9.介護は100兆円産業になる

介護保険制度からの介護給付費は現在約10兆円ですが、これが10年後の2028年はその倍の20兆円になると推計されます。20兆円は現在の電力産業と同規模です。この20兆円というのはあくまで介護給付費だけの金額なので、介護を取り巻く産業である福祉用具や高齢者向け宅食、衣料品などは含まれていません。これらの周辺産業を含めると2025年時点のマーケット規模は約100兆円と言われています。

 

10.最後に

本書は介護を経営者の目線でさまざまなデータから今と今後を示しています。介護は日本の大きな課題であり、同時に産業としては非常に重要なものです。今回紹介したこと以外にも今の事業者への問いかけや若者への提言なども記載されていますので皆さん是非、読んでみて下さい。読みやすく一気読みしてしまいました。

 

 

kazu0000.hatenablog.com

 その他にも介護の記事も書いています。

 

kazu0000.hatenablog.com

 

 

kazu0000.hatenablog.com