ビジネスマンが日々直面する課題のひとつに「いかに成果を出しつつ、健康やパフォーマンスを維持・向上させるか」という問題があります。仕事量や責任が増える中で、体力面・精神面ともに限界を感じてしまい、結果的に集中力の低下や生産性の減少を引き起こすこともしばしば。「何とかしたい」と思いつつも、時間がない、具体的な方法がわからない――そんなジレンマを抱える方は多いのではないでしょうか。
そんな状況の中で注目されているのが、鈴木祐さんの『最高の体調』という一冊です。本書はタイトルのとおり、“最高の体調”を手に入れるための知見が凝縮された本であり、ビジネスパーソンが抱える多くの悩みを解決するヒントが詰まっています。現代人の生活習慣や栄養、運動、メンタルヘルスに至るまで、多角的な観点からアプローチしているところが特徴です。そこで本稿では、40代のビジネスパーソンとして私自身が気づき・学んだポイントに焦点を当てつつ、内容をかみ砕いてご紹介したいと思います。
1. 「不調の正体」を知ることがスタートライン
本書の冒頭では、まず「不調とは何か」という問いに対して、科学的根拠を交えつつ解き明かしていきます。頭痛や肩こり、倦怠感など、現代人が抱える不調の原因として挙げられるのが、食生活の乱れや運動不足、過度なストレスなど。しかしそれらはあくまで表面的な因子に過ぎず、実は「腸内環境の乱れ」や「炎症」、「慢性ストレスによるホルモンバランスの崩れ」などが複合的に作用している可能性が高いといいます。
鈴木さんのアプローチが秀逸なのは、いわゆる一般的な健康本のように「○○を食べなさい」「有酸素運動をすればOK」という単発のアドバイスにとどまらず、より本質的な「身体のメカニズム」を理解させてくれることです。特に腸内細菌の影響や炎症にフォーカスすることで、慢性不調の根源を具体的に示してくれます。ビジネスの場で例えるなら、「症状(=結果)」を一時的に対処するのではなく、「原因(=仕組みそのもの)」を分析して再構築する、というアプローチといえます。問題の土台を認識することが、最大のパフォーマンスを引き出すための第一歩というわけです。
2. 食事が体調を作る――「腸内環境」の重要性
「腸は第二の脳」という言葉を耳にするほど、近年では腸内環境の話題が盛んです。実際、本書では「腸内環境」が健康のキーポイントとなることを強く訴えています。たとえば、腸内細菌の状態が良い人ほど免疫機能が高く、逆に悪ければ、肌荒れや肥満、メンタル不調につながりやすいと言われます。
この腸内環境の改善策として重要視されるのが「食物繊維をしっかり摂る」こと。具体的には野菜や海藻、きのこ、豆類などを意識的に食事に取り入れることが効果的です。ビジネスマンであれば「忙しい」「外食が多い」という声が挙がりがちですが、コンビニでもサラダやミネラル豊富な食材を探せば意外と手に入りますし、最近はタンパク質を摂取しながら野菜もしっかり入っている宅食サービスなども充実しています。少し意識を変えるだけで、毎日のランチが腸内環境改善へのステップに変わるのです。
また、食物繊維以外にも「プロバイオティクス」や「プレバイオティクス」を含む食品を取り入れることも推奨されています。ヨーグルトや納豆などの発酵食品はもちろん、乳酸菌やビフィズス菌などが入ったサプリを活用するのも手段のひとつ。本書では科学的エビデンスを交えてわかりやすく解説されているので、自分の食生活に適したものを選び、無理なく継続することが大切です。
3. パフォーマンスアップの鍵は「炎症コントロール」
本書で特に興味深いのが、「炎症」という切り口です。炎症と聞くと、風邪をひいたときの喉の腫れなど局所的なイメージを抱きがちですが、実は慢性的な炎症は身体の不調のみならず、メンタルや認知機能にも悪影響を与えるとされています。仕事中に集中力が落ちたり、イライラしたり、やる気を失ってしまう原因の一端には、この「炎症」があるかもしれないのです。
炎症の原因としては、加工食品の摂りすぎや睡眠不足、喫煙やストレス過多などが挙げられます。本書では「抗炎症」を意識した食事・生活習慣の例として、オメガ3脂肪酸の摂取を推奨しています。具体的には青魚(サバ、イワシ、サンマなど)やナッツ類などを積極的に食べることが挙げられますし、トランス脂肪酸や過剰な糖質摂取を控えることも大切です。
また、炎症を抑える上で欠かせないのが「十分な睡眠」です。睡眠不足が続くと身体の修復が不十分になり、炎症を悪化させる原因にもなります。ビジネスマンにとっては「睡眠時間を削ってでも働く」という発想が根強くありますが、パフォーマンスアップという観点では逆効果。本書を読むと、少し無理をして働くよりも、睡眠をしっかり確保した方が長期的に生産性が高まることがデータからも示されています。
4. 「メンタルヘルス」×「最高の体調」
ビジネスマンのなかには、メンタル面の疲労やストレスを「やる気が足りない」「単なる気分の問題」などと捉えがちです。しかし本書を読むと、メンタルヘルスは「身体の調子」と密接にリンクしていることがよくわかります。腸内環境が悪化するとセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質の分泌が乱れ、やる気や集中力の低下につながるのです。
同様に、炎症が慢性化すれば脳内の神経伝達にも悪影響が及び、結果的にメンタル不調として表出することがあります。ですから、食事・運動・睡眠などの生活習慣を整えることが、精神的な安定や前向きなマインドを保つためにも重要になります。仕事を通じて大きな成果を求める方ほど、「体調管理=自己投資」であると意識を切り替え、メンタル面も含めた総合的な健康を追求する必要があるのです。
5. 小さな実践から始める――継続が大切
『最高の体調』を読んでいて感じるのは、どの習慣改善も一朝一夕では難しいということです。ただし、すべてを完璧にやろうとせず、小さな一歩から始めることで大きな変化が生まれるというのも事実。本書の魅力は、具体的な改善策やデータが豊富に載っているので、「どこから始めればいいかわからない」という方でも取り組みやすい点にあります。
たとえば、朝起きてコップ1杯の水を飲む、いつものランチにサラダや海藻を追加する、1日10分ウォーキングの時間を増やす、就寝前の30分はスマホを見ないようにする――など、小さな行動でも続けることで確実に身体は変わります。私はまず「寝る90分前のスマホ封印」と「晩ごはんで野菜をプラスする」ことから始めました。慣れてきたら次の目標を設定して……というふうに、少しずつステップアップしていくのです。
6. ビジネスに直結する「最高の体調」とは
ビジネスシーンを振り返ると、集中力やアイデア力、コミュニケーション能力など、人によって得意不得意はあるものの、すべてのパフォーマンスは「身体の土台」の上に成り立っています。これまで長時間労働や根性論、精神力だけで乗り越えようとしていた方こそ、本書の示す「体調を最適化する」という考え方が大きな武器になるはずです。
実際に、私も本書を参考にして生活習慣を少しずつ改善してみると、朝の目覚めがスッキリし、日中の眠気がほとんど気にならなくなりました。結果として仕事の効率が上がり、余計なミスが減り、さらにやる気が高まる――という好循環が生まれています。健康管理に意識を向けることは、決して「遠回り」ではなく、自分の能力を最大限に活かすための「近道」なのだと改めて感じます。
終わりに
鈴木祐さんの『最高の体調』は、単なる健康本にとどまらず、ビジネスパーソンが本来持つパフォーマンスを最大化するための強力なガイドブックです。腸内環境や炎症、睡眠、メンタルヘルスなど、総合的な視点で「自分の身体」と向き合えるようになる本書の内容は、多忙な日々を過ごす現代人、特に40代以上のビジネスパーソンにこそ響くものがあるでしょう。
数多くの研究や論文をベースにした科学的なアプローチで、再現性の高い実践策が紹介されていることも、本書が評価される大きなポイント。最新の知見を取り入れつつ、難解な表現は避け、誰でも理解しやすいよう配慮されているので、「健康本は難しそう」という先入観をお持ちの方でも安心して読めます。
仕事に全力投球したい、もう一段ギアを上げて成果を出したい、しかし不調や疲れがつきまとって思うように動けない。そんな方にとって『最高の体調』は、迷路を抜けるための道しるべとなるかもしれません。ぜひ一度手に取って、今の自分の生活習慣と照らし合わせながら読んでみてはいかがでしょうか。自分の身体が変われば、仕事に対するパフォーマンスやマインドセットもきっと変わるはずです。継続することで真の「最高の体調」を手に入れ、ビジネスもプライベートも一段上のレベルへ引き上げてみませんか。