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(本の感想)前編 図解 眠れなくなるほど面白い社会心理学 亀田 達也さん

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■著者について

1960年生まれ。東京大学大学院社会学研究科修士課程、イリノイ大学大学院心理学研究科博士課程修了、 Ph.D(心理学)。現在は東京大学大学院人文社会系研究科社会心理学研究室教授。著書に『モラルの起源ー実験社会科学からの問い』(岩波書店)、『合議の知を求めてーグループの意思決定』(共立出版)、共編著に『複雑さに挑む社会心理学ー適応エージェントとしての人間』(有斐閣)、『「社会の決まり」はどのように決まるか』 (フロンティア実験社会科学6、勁草書房)、『文化と実践ー心の本質的社会性を問う』(新曜社)、『社会のなかの共存』(岩波講座 コミュニケーションの認知科学 第4巻、岩波書店)などがある。 --このテキストは、tankobon_hardcover版に関連付けられています。

 

■本書の概要

社会心理学とは、社会の中で人々の心の動きや行動の法則を解き明かし、なぜそう感じ、そう行動するのかを研究する学問だと著書は書いています。

本書では社会心理学を社会現象、組織・集団、職場、個人と対人認知、社会のあり方の5項目に分けてその行動となぜそのような行動をするのかを分かりやすく記載しています。社会心理学を学び、その視点から世の中を見ていくことが、きっと新しい発見があるはずです。その中でも私に響いた心理学を何個か記載していきます。

 

■本の感想

1、見て見ぬ振りをするのはなぜか?

1964年、ニューヨークの住宅街で、深夜に女性が深夜に自宅の前で襲われ、刺殺される事件がありました。アパート住民38名がこの騒動に気づき中には窓から事件を目撃した者もいました。

しかし、誰一人として彼女を助けようとする人はいなかったのです。なぜでしょうか?マスコミは「大都市の冷淡さや他人への無関心が背景にある」と論じましたが、心理学者のラダネとダーリーはそれだけでなく多くの目撃者がいたことがかえって人々の行動を抑制したのではないか?と考えます。

この節を確かめるために行った実験が「傍観者実験」です。この実験は被験者である学生に集団討論会への参加を依頼。被験者は個室でインターフォンで他の被験者と共に意見を求めるように指示されます。すると、突然参加者の一人が発作を起こし助けを求めてくるというものです。

結果は、参加者が2人だと3分以内に全員が外にいる研究者に事態を報告したのに対して6人では4分経過しても60%の人しか報告をしなかったのです。

つまり、多くの他者がいる時ほど、人は援助行動を起こしにくいという傍観者効果が証明されたわけです。

 

2.あおり運転をしやすい人の特徴とは?

近年、あおり運転が社会本題になっています。あおり運転は車線変更や追い越しなど、些細なことが原因で起こりやすいといわれています。些細な行為で攻撃行動に出てしまう人はどのようなタイプの人でしょうか?

これは社会心理学的には「敵意帰属バイパス」が強い人といえるかもしれません。敵意帰属バイパスとは相手にされた行為を、敵意や悪意から生じたものと捉える傾向のことです。

実際、敵意帰属バイアスの強い人ほど攻撃行動に出やすいという研究結果もあります。A.ドッジらは殺人、暴行、強盗といった犯罪で逮捕された青年を対象に、一般的には敵意がないと考えられる行動に対し、彼らがどのくらい敵意を見出すかの調査を行った所、敵意バイパスの強い少年ほど、犯罪件数も多いことが明らかになりました。このように敵意バイパスと攻撃行動には密接に関係があるのです。

 

3.人はなぜ組織に服従してしまうのか?

私達はグループでなにか決める時に本心では違うと思っているのに、周囲に合わせて同調をして同調してしまうことがあります。こうした上辺だけの同調を「外面的同調」といいます。これとは逆に、周囲の意見が正しいと思って同調することを「内面的同調」といいます。外面的同調は服従行動においても機能します。たとえば企業ぐるみの不正などは、服従によっておこる事件といえるでしょう。本心では正しくないと思っていても「会社のためである」などの心理から、命じられるまま不正行為に加担してしまうのです。

フレンチとイレブンはアイヒルマン実験で見られる権威への服従を引き起こす力を「社会的勢力」と呼び5つに分類しました。

①報酬勢力

 報酬を与える事ができる立場にいる者

②正当勢力

 上司、先輩など自分より地位が高いと思う相手

③強制勢力

 罰を与えることが出来る立場

④専門勢力

 法律、医療、文化、政治といった専門家

⑤参照勢力

 好意を抱いている相手、尊敬している相手

普段は善良で責任感のある人でも、こうした社会勢力の下に組み込まれると、それが間違っているとわかっていても服従してしまうことがあるのです。

 

4.集団対立はどのように起こるのか?

人は自分が所属するチームには思いやりを持ち、他人が所属するチームには敵愾心【てきがいしん】を抱きます。こうした集団の対立を「集団間葛藤」と呼びます。

この集団葛藤を解消するために3つの段階で構成された「泥棒洞窟実験」を行いました。第一段階として共同生活をして仲間意識を高める。第2段階としてその集団同士を対立させ集団葛藤を発生させいました。その集団間の人間関係を調べるとほとんどの人が内集団の仲間を友人と呼びました。つまり集団葛藤が生じている場合は、仲間への連単意識、相手集団への敵意識が強化されていたのです。第3段階では様々な方法で集団間葛藤の解消を目指しました。しかし懇親会などでは小競り合いが勃発し集団間葛藤の解消には至りしませんでした。このチームに個別では解決できず協力しないと解決できない上位目標を与えた所、お互いに敵意をもっていたリームが協力し外集団への敵意感情が薄れました。集団間で生じた対立「集団間葛藤」については交流会など、集団通しの単なる接触ではなく、各集団が協力しなければ解決できない「上位目標」を与えることが効果的であると証明されたのです。

 

今回は前編としましたので続きは後編で記載します。