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(本の感想)前編 僕はやっと認知症のことがわかった 長谷川和夫

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■著者について
●長谷川 和夫:1929年愛知県生まれ。53年、東京慈恵会医科大学卒業。74年、「長谷川式簡易知能評価スケール」を公表(改訂版は91年公表)。89年、日本で初の国際老年精神医学会を開催。2004年、「痴呆」から「認知症」に用語を変更した厚生労働省の検討会の委員。「パーソン・センタード・ケア」を普及し、ケアの第一人者としても知られる。現在、認知症介護研究・研修東京センター名誉センター長、聖マリアンナ医大名誉教授。認知症を描いた絵本『だいじょうぶだよ――ぼくのおばあちゃん――』(ぱーそん書房)の作者でもある。

●猪熊 律子:読売新聞東京本社編集委員。1985年4月、読売新聞社入社。2014年9月、社会保障部長、17年9月、編集委員。専門は社会保障。98~99年、フルブライト奨学生兼読売新聞社海外留学生としてアメリカに留学。スタンフォード大学のジャーナリスト向けプログラム「John S. Knight Journalism Fellowships at Stanford」修了。早稲田大学大学院法学研究科修士課程修了。著書に、『#社会保障、はじめました。』(SCICUS)、『社会保障のグランドデザイン』(中央法規出版)などがある。

 

■本の概要

「長谷川式簡易知能評価スケール」という言葉は介護・医療従事者の方や認知症家族を抱える方なら一度は耳にしたことがあるでしょう。それほどに有名な認知症の評価指針を作った著者自身が認知症になり自らが認知症となったことでわかった事を専門知識も交えて書かれています。認知症を学びたい人もまた、認知症になった方も是非、読んでいただきたい一冊となっています。

 

■本の感想

1.初めに

皆さんは「長谷川式簡易知能評価スケール」と言う言葉を聞いたことがあるでしょうか?「今日は何年の何月何日ですか?」「100から7を引いて下さい」等の検査をして認知症かどうか「診断の物差し」として日本中で広く使われている認知機能検査が長谷川式スケールでこれを開発したのが著者の長谷川和夫さんです。

そんな長谷川さん自身が認知症になりました。認知症であると自覚して発表したのが2017年7月、88歳の時です。認知症は、言語や知覚に関する脳の機能低下が成人になってから起こり、日常的に生活に支障をきたしている状態をいいます。

ちなみに厚生労働省によると「団塊の世代」が全員75歳以上となる2025年には約700万人が認知症になると推計されています。「認知症は誰もが向き合うものですよ、むやみに怖がることはありませんよ」ということが伝えたくて思い切って公表したそうです。

著者が実際に認知症になってみて実感したことは、認知症は一旦なったら固定したもののように思われがちですが、そうではないということです。例えば著者の場合は、朝起きた時は調子が良いけれど、だんだん疲れてきて混乱がひどくなる。でも一晩寝るとスッキリして、またフレッシュな新しい自分が蘇ります。だから「一度なったらおしまい」とか「何もわからない人」などど思わないでほしい、特別扱いしないで頂きたいとおっしゃています。

 

1、認知症になってショックだったか?

この質問はよく聞かれる質問だそうです。

この質問に対して以前に体験した話を書いています。ある日、認知症と診断された男性が「セカンドオピニオン(別の医師の意見)」として尋ねてきたそうです。その男性は「先生、聞きたいことがあるのですが、質問していいですか?」とおっしゃりました。「もちろんです。どうぞ」と答えると「他の誰かじゃなくてなぜ自分がならないといけなかったのですか?」と聞いてきたのです。皆さんならどう答えますか?先生は答えられなかったそうです。何か話すよりも一緒に「悩みますよ」と伝えたかったので、その時にできたのは、その人の手の上に自分の手を重ねて「そうですねえ」といって握ることくらいでした。その男性は会社で重要な職についている方でしたので、その方からすれば「どうして私が何も悪いことをしていないのに「社会でそれなりの仕事をしてきた私がこの後に及んでなぜ?」という気持ちが強かったのでしょう。当時は認知症への理解が今よりも進んでいませんでしたから、相当ショックだったのでしょう。

一方で著者はどうだったのかというと「認知症になったてしょうがない」「年をとったのだから。長生きをすれば誰でもなるものだから、それは当たり前のこと」と思ったそうです。ショックでなかったかというと嘘になるけれど、なったものは仕方がないというのが正直な感想であると述べています。もちろん、もどかしい気持ちはあるそうです。今日が何月何日で、何曜日かもわからなくなるのですから当然です。認知症でいちばん多いアルツハイマー認知症は、一般的に、まず時間の検討がつかなくなり、次に場所の検討がつかなくなり、最後に人の顔がわからなくなると言われています。

 

2、晩節期の認知症

最初は自分ではアルツハイマー認知症ではないかと疑っていたようですが、専門病院で詳しい検査をした所、「嗜銀顆粒性(シギンカリュウセイ)認知症」であると診断がされたそうです。

※嗜銀顆粒性(シギンカリュウセイ)認知症は、脳をつかさどる部分などに嗜銀顆粒性という異常なタンパク質がたまることから、その名がついた。記憶障害以外の認知症機能の低下はあまり目立たず、怒りっぽくなる、頑固になるほか、不安や焦燥、躁鬱などの症状が見られる。確定診断には病理学的検査が必要であり、臨床診断は難しいとされる。

著者は80歳を過ぎての認知症を「晩成型の認知症」と呼んでいるそうです。これからこの「晩成型認知症」になる方が増えてきます。だから絶対に人ごとではないと思って認知症のことを知っておくことが大切だとおっしゃっています。

 

3、認知症の定義

認知症とは何かについて記載していきます。認知症とは「成年期以降に、記憶や言語、知覚、思考などに関する脳の機能の低下が起こり、日常生活に支障をきたすようになった状態」といわれています。つまり、認知機能に障害を負ってきた生まれつきでも、正常な老化の一部でもないということです。いったん正常に発達した神経細胞が、外傷や感染症、血管障害などのさまざまな病気や原因によって損なわれ、障害を受けた時に起こるものです。

認知症の特徴としては、次のようなことが上げられます。まずは、脳の器質的な障害であり、認知機能が低下していること。ここでいう「器質的な障害」とは、脳の神経細胞のつながりが働かなくなってしまうことを指します。脳の神経細胞は、複雑で精巧なネットワークを構築しているので、それが阻害されると認知機能は阻害されます。意識障害が無いことも特徴として上げられます。つまり、話しかけても返事がなかったり、意識が混濁していたりする場合とは区別されるということです。「せん妄」と呼ばれる軽い意識障害があると、物忘れと似たような症状を引き起こすことがあります。また、脱水症状や感染症、薬の過剰投与によっても、意識障害は起こりやすいので注意が必要です。認知機能の低下と共に、日常生活にも支障が生じていることも重要な特徴としてあげられます。日常生活に支障がある期間は一時的ではなく、継続しています。さらに脳の器質的な障害によって、それが引き金となり、感情や行動の面などでさまざまな変化が見られるという特徴があります。たとえば、ご飯を食べたのに、器質的な障害がある記憶障害によってそれを覚えることができず「ご飯をたべさせろ」と騒いだり、怒って暴力を振るうのは、器質的な障害に伴って起こる変化と言えます。このような、付随して起こる怒りや暴力、疑いなどの感情行動は「BPSD」と呼ばれています。

 

4、認知症の種類と特徴

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アルツハイマー認知症

認知症というとアルツハイマー認知症を思い浮かべる人が多いと思います。アルツハイマー認知症はアロイス・アルツハイマー(1864から1915年)というドイツの精神科医が最初に症例を発表したために、その名をとって呼ばれています。

アルツハイマー認知症では、脳の神経細胞の外側にアミロイドβというタンパク質が付着した、老人斑と呼ばれるシミのような異常構造が多く見られます。老人斑ができたあとで、神経細胞の中に異常な線維が蓄積する神経原線変化と呼ばれる病理変化が見られ、神経細胞が死んでいきます。アミロイドβの蓄積が始まってから10年から15年以上かけて認知症はゆっくり進行していきます。だたし、アミロイドβが蓄積しても、認知症が発症しないこともあります。

アルツハイマー認知症になると、物忘れなどの記憶障害や、時間や場所などがわからなくなる見当織障害などさまざまな認知障害が起こり、生活に支障をきたします。時間をかけて徐々に進行し、重度になると自分でものを食べることや着替え、意思疎通などができなくなります。自分で座ることも不可能になり、寝たきりになり、最終的には意識が低下し、昏睡状態となって死を迎えます。今では認知症の6割は、アルツハイマー認知症といわれています。

 

②脳血管性認知症

以前、日本で多かったのは脳血管性の認知症でした。脳血管性認知症とは、脳梗塞脳出血など、脳の血管性の障害によって起こる認知症です。脳梗塞は脳の血管が詰まって一部に血液が流れなくなり、その部分の脳が動かなくなってしまう病気です。脳出血は脳の血管が破れて出血し、その部分の脳細胞が圧迫されて起こります。脳の血管が詰まったり出血すると、脳の細胞に酸素や栄養が送られなくなるため、細胞が壊れてしまい、本来、細胞が担っていた機能を失うことによって認知症が起こるのです。血管の病気を引き起こす主な原因は動脈硬化です。動脈硬化の危険因子として、高血圧、糖尿病、心疾患、脂質異常症、喫煙などがあります。

症状としては、記憶障害の他に歩行障害などが見られることが多くあります。排尿障害が一緒に起こることもあります。「感情失禁」といって、感情をコントロールできず、ちょっとしたことで泣いたり、怒ったりすることもあります。症状の現れ方が特徴的で、突然、症状が現れたり、落ち着いたと思ったら、急に悪化したりするとこもあります。女性よりも男性の方が多く症状しているといわれます。

 

レビー小体型認知症

 レビー小体とは、神経細胞に出来る特殊なタンパク質が大脳皮質や脳幹にたくさん集まり、神経細胞が壊されてしまうため、認知症の症状が起こるとされています。大脳皮質とは、何かを考えるときに中枢的な役割を担っている場所です。脳幹は、呼吸や血液なの循環などの人が生きるために欠かせない役割を担っています。レビー小体はパーキンソン病でも見られるため、似た症状が見られます。手が震える、動作が遅くなる、筋肉がこわばる、体のバランスが取りにくくなるなどです。そのため転倒しやすくなります。この認知症の特色として一番に上げられるのが「幻視」です。初期の段階では記憶障害よりも幻視の症状が見られるため、認知症と思わない方も多いようです。この認知症の方ははっきりとした幻視をみます。周囲には見えていなくとも本人には見えているのですからきちんと受け止めることが大切です。ちなみにレビー小体型認知症を明らかにしたのは日本の精神科医です。小坂憲司先生といいます。1976年に世界中に知られるようになりました。

 

④前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は、脳の前頭葉と側頭葉が萎縮し、血流が低下することでさまざまな症状が引き起こされる認知症です。

前頭葉は思考や感情の表現、判断をコントロールするとされ、人格や理性的な行動、社会性に大きく関係します。側頭葉は、言語の理解、聴覚、味覚の他、記憶や感情をつかさどっています。どちらも脳のたいへん重要な働きを担っており、昨日の低下は大きな影響を及ぼします。

この認知症の特徴は、人格の変化や常識から考えると疑問に思われる行動などです。実例として、公務員だった方が万引きをしてしまい、なぜそんなことをしたかを調べる過程で、その方が前頭側頭型認知症だとわかったことがあります。社会性が低下して問題が生じることが多いため、人々がこの認知症を理解してくれないと、本人も家族も非常に苦しむことになります。抑制が利かなくなる。同じことを繰り返すなどのほか、他者への共感ができなくなったり、感情移入ができるなったりするなど、感情が鈍くなどといった症状も伝えられています。65歳未満の方に比較的多いとされています。

 

ほかにも、認知症の種類や、認知症を引き起こす病気としては多くのものがあります。

今回は前編としてここまでの記載とします。

 介護・認知症関連の過去の記事についてもリンクを貼っておきます。

 

kazu0000.hatenablog.com

 

 

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