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(本の感想)ワーク・エンゲイジメント「健全な仕事人間とは」 島津明人さん

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■著者について

東京大学文学部助教授。博士(文学)、臨床心理士、共著・単著に「自分でできるストレス・マネジメント」「じょうずなストレス対処のためのトレーニングブック」最新書に「ワーク・エンゲイジメント:ポジティブメンタルヘルスで活力ある毎日を」がある。

 

■本書の概要

従業員の健康も生産性の向上も、組織のマネジメントにとっては重要な問題であり、特に働く人々の心の健康をポジティブな面から注目する動きは近年、活発になっている。

本書で紹介するのは、健康の増進と生産性の向上を両立するための考え方をである「ワーク・エンゲイジメント」です。ワーク・エンゲイジメントは仕事に誇りをもって熱心に取り組み、さらに仕事から活力を得ている状態をいい、これが高い人は心身の健康度が高く、組織に愛着を感じ、生産性も高い。ワーク・エンゲイジメントについて解説するとともに、これを高める方法についても論じている。

 

■本の感想

1. ワーク・エンゲイジメントとは何か?

ワーク・エンゲイジメントとは

①「仕事に誇りとやりがいを感じている」(熱意)

②「仕事に熱心に取り組んでいる」(没頭)

③「仕事から活力を得て生き生きしている」(活力)

この3つがそろった状態であり、バーンアウト(燃え尽き)の対概念として位置づけられている。

ワーク・エンゲイジメントの高い人は、心身の健康状態が高く、組織に愛着を感じやすく、仕事を辞めにくく、生産性が高いことがわかっている。

 

2.これまでの概念と何がちがうのか?

図表1「ワーク・エンゲイジメントと関連する概念」はワーク・エンゲイジメントと関連する概念との関係を図示したもので、それぞれの概念が「活動水準」と「仕事への態度・認知」との2つの軸によって位置づけられている。

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まずは、バーンアウトとの関係に注目してみよう。バーンアウトとは一般的には「仕事に対して過度のエネルギーを費やした結果、疲労的に抑うつ状態に至り、仕事への関心や自信を低下させた状態」と考えられている。

図表1で見るとワーク・エンゲイジメントは仕事への態度・認知が肯定的であるのに対してバーンアウトは仕事への態度・認知が否定的で活動水準も低いことがわかる。

エンゲイジしている人は、仕事で楽しいと思い、仕事から活力を得ているのに対してバーンアウトしている人は逆の状態である。

 

次に、ワーカーホリズムとの異同である。

ワーカーホリズムというと仕事にすべてのエネルギーと時間を傾けている望ましい状態であるととらえられることがある。しかし、どちらも正しい認識ではない。

ワーカーホリックな人は「強迫的に」働くのに対して、エンゲイジメントが高い人は「楽しんで」働くこの点において両者は異なっている。

 

最後に職務満足感との異同である。

会社の中では職務満足感とエンゲイジメントと言い換えているだけのこともあり、その違いについて整理したい。

職務満足感についての定義は「自分の仕事を評価してみた結果として生じる、喜ばしいあるいはボジティブな情動状態」である。ワーク・エンゲイジメントが仕事を「している」の感情や認知を指すのに対して職務満足感については仕事「について」あるいは仕事に「対する」感情や認知のことを指す。つまり職務満足感のほうがより認知的な要素を重視しているといえるでしょう。また、エンゲイジメントは活性化という要素が含まれているのに対して、職務満足感には飽和という要素が含まれている。

 

3.ワーク・エンゲイジメントを高める方策

ワーク・エンゲイジメントを高めるには、どんな点に着目すればよいのだろうか?

大きく分けると

①従業員が行う方策

②組織が行う方策

に整理することが出来る。図表2

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①従業員が行う方策

1)自己効力感を高める

自己効力感つまり、「やれば出来る」という自信を高めることである。

2)キャリアの道筋をつける

仕事に積極的に関与(エンゲイジ)するためには、ある程度長期的な目標を建てることが重要である。

3)感謝する

私たち日本人は、「相互強調的自己」を持っており、周りの人と関係性の中で自己を位置づけています。こうした文化では周りとの調和を保つことが重視され、周りとのトラブルはストレスを生み出す原因になる。逆に回りの人の役に立てたという経験は、自尊心を高めるもとになります。

4)ジョブ・クラフティング

ジョブ・クラフティングは「課題や対人関係における従業員個人の物理的ないし認知的変化」と定義される。つまりジョブ・クラフティングとは従業員がみずからの仕事を変化させながら、仕事の意義を高めていく主体的なプロセスといってもよいでしょう。

 

②組織が行う方策

1)行動→結果の随伴性

行動に対するフォードバックが環境から得られることが、その行動を増やしたり減らしたりすることにつながるといわれている。

たとえば、部下が仕事で頑張ったら、その仕事を褒めることで、ますますその仕事を頑張るようになる。逆にミスをした場合は、どこがいけなかったのかを具体的に指摘することでそのミスを減らす努力をするようになる。したがって、部下のワーク・エンゲイジメントを上げるには「頑張ったら報われる」関わりを上司が行うことが重要である。

2)要求度と資源のマッチング

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