この記事については後編になります。
前半についてはリンクを張っておきますのでそちらをご確認下さい。
7.エンゲージメントを左右する9つのキードライバー
職務・・・職務に対して満足度を感じているか?
自己成長・仕事を通じて、自分が成長できていると感じているか?
健康・・・従業員が仕事の中で、過度なストレスや疲労を感じていないか?
支援・・・上司や仕事仲間から、職務または自己成長の支援を受けているか?
人間関係・上司や仕事仲間と良好な関係が築けているか?
承認・・・周りの従業員から認められていると感じているか?
理念戦略・企業の理念・戦略・事業内容に対して納得・共感できているか?
組織風土・企業の組織風土が従業員にとって納得・共感しているか?
環境・・・給与、福利厚生、職場環境といった従業員を取り巻く会社環境に満足しているか?
この9つのキードライバーの状態にはばらつきがあります。
たとえば「職務」の満足度は今ひとつだけども「支援」や「人間関係」が非常に高く、全体としてみるとエンゲージメントが高い、というように9つのドライバーの影響が重なり合ってエンゲージメントを決定づけるのです。
良い結果を出しているドライバーをさらに強化するという道筋もありますし、悪い結果を示しているドライバーに対して対策を取るという道筋もあります。
具体的にどのような行動や慣行、出来事が、9つのキードライバーを動かし、エンゲージメントに影響を与えるか見てみましょう。
支援・・・上司や仕事仲間から、職務または自己成長の支援を受けているか?
効果的に1ON1ミーティングとは
最近、マネジメントの取組みとして多くの企業に導入が広がっている1ON1ミーティング。上司と部下が定期(週1月1)で話し合う場を設け、仕事の中で課題の確認、相談、振り返りを行います。「支援」のドライバーを動かす施策であり、エンゲージメントを高める効果があるそうです。実際に効果を上げている職場も多いでしょう。
1ON1ミーティングが機能している場合とそうでない場合があります。機能しない理由として多くの企業から聞くのが「1ON1ミーティングの間、大半は上司がしゃべてている」という話。1ON1ミーティングは部下と上司が8対2くらいが良いとされています。このミーティングが機能するかどうかは、もともと上司と部下に信頼関係があるかどうかに左右されます。信頼関係が無い中で行っても部下は安心してしゃべることができません。それでは、どのように行えば有効でしょうか?ひとつ有効と考えられるのは受ける側(部下)にミーティング相手を選んでもらうのです。「この人に相談したい」という相手を選んでもらえば正直に話し合える1ON1になりやすくエンゲージメントにも良い影響があるでしょう。
承認・・・周りの従業員から認められていると感じているか?
上司に成果をもっていかれてしまう
仕事で成果が出た時に会社で称賛されたり、社外から注目され取材されたりするのが、現場のスタッフではなく上司になることが往々にしてあります。自らの仕事の成果が十分に承認されていない、上司に成果を横取りされた、といった感覚にになったらエンゲージメントが損なわれるでしょう。
そもそも、個人の成績がはっきり可視化される営業職などは異なり、大勢の人が関わってものづくりを行う職種においては、成果が誰のものなのかは見えにくくなります。顧客とやり取りするフロントの人たちは、商品のサービスに対する賞賛の声を聞く機会もありますが、開発に携わるクリエイティブ職の人たちはそのような機会が少なく、一方で不具合の報告などに日々接するため、自分の仕事が「承認」されているという感覚が弱くなりがちなようです。クリエイティブ側の人たちを称賛する機会を設ける、商品やサービスを好意的に評価する顧客との機会を提供する、といった取り組みが考えられます。特に、上の立場にある人が「成果を横取りされた」と部下たちに感じられないように自ら現場のスタッフを承認する姿勢を示していることが重要と言えるでしょう。
8.キードライバーは互いに相関する
9つのキードライバーは互いに相関します。その項目をいくつかの小項目似ブレイクダウンして分析すると、特に相関が強いいくつかのグループに分類できそうなことがわかっています。
このような相関関係を踏まえることで、複数のドライバーが課題を示唆しているとき、どこから手を付けると高い効果が見込めるか、といったことが見えてきます。
8.組織改善は自社で自ら取り組むべき課題
組織の改善は、組織の人達自身で取り組むべきものです。組織改善を外部のコンサルタントに任せてはいけません。エンゲージメント、すなわち「自発的な貢献意欲」を高めることが組織改善の核心なのです。社員が当事者意識を持って組織改善に取り組むことは、エンゲージメントを高めることに直結します。答えは外にではなく、中にあるのです。
組織改善は、本来、組織づくりは終わらない継続的な取り組みです。決して外部任せにせずに、自分たちで取り組みをしていかなければなりません。だからこそ、社員が自ら声をあげること、声をあげるカルチャーをつくることが不可欠です。
グーグルでは、全社員が経営者に対してどんなことでも質問できる、「ask me anything」というセッションが定期的に開催されています。突拍子もないアイディアも、ちょっとした時間の無駄も、許容しながら、日頃から社員が自由に声を上げられるカルチャーを育てていくこと。そのような、より自然な、より人間的なカルチャーの中から、未来が生まれていくのではないでしょうか?
9.組織はオープン化し、マネジメントは「支援」になる
エンゲージメントの向上が大きな課題となっている今日、マネジメントのあり方に大きな変化が求められます。多くの日本企業は、現場経験を積んだ人がやがてマネジャー(管理職)になり、出世を重ねれば経営者になるというキャリアパスがごく普通に存在します。しかし、野球でホームランをうてる人が、監督も上手にできるとは限りません。求められる能力が異なるからです。技術力が一番高いからマネジメントするとか、営業力が高いからマネジメントするというのは、正しい人員配置ではないように思えます。上の言うとおりに動くことを求める組織のあり方は、もはや完全に終わりをつげています。社員を囲い込んでいた「壁」は、他者でもやっていける力を持った優秀な人材にとっては、もはや存在しないようなものです。人材が流動化すると「壁」はくずれ、真ん中に立っている「旗」つまり、ビジョン、理念、ミッションなどの価値観が魅力的な組織に人が集まるようになります。
また、ビジネスにおける「価値の生み出し方」も変化していきます。図はさまざまな仕事で価値を生むための行動を、行動、管理、協働、創造の4つの要素で整理したものです。業種や職種によって具体的な内容に違いはあるものの、基本的には、どのような仕事もこの4つ要素で成り立つとされています。
ビジネスパーソンの方に、日常の仕事をこれら4つにどのように配分されているかを描いてもらうと、多くの場合、「競争」と「管理」の領域に偏った図ができます。(図のイメージ①)今日のビジネスでは「協働」や「創造」の仕事が重要となっています。図の右下に 偏った状態から、左上の方へと仕事の比重を移していくこと(図のイメージ②)が求められており、それに合わせてマネジメントも変わって行かなければなりません。メンバーに気持ちよく働いてもらうことが大切でメンバーを支援する「サーバントリーダー」や「パートナー」「コラボレーター」が、これからのマネジャーの役割になります。
10.ムダや遊びを許容し、対話で気持ちをすり合わせる
マネジメントの変化は、ビジネスにおけるコミニュケーションにも求められています。図はグループ内におけるコミュニュケーションのモードを、テーマと雰囲気の固さ、柔らかさを軸としたマトリックスで表したものです。
多くの日本企業で不足しているのが、ビジネスに直結するテーマについて上下・立場を意識しない緩い雰囲気で話し合うコミニュケーションです。固い雰囲気でのコミュニュケーションばかりが重視されているように感じます。
たとえば、職場での何気ないおしゃべりが無駄話への許容度がさがり、仕事上の要件をテキパキと伝えて忙しく動き回るのが「頑張っている」とみなされる傾向が強まったのではないでしょうか?無駄話にイライラする人がいないでしょうか?会議が時間通りに進んで、脱線せずに終わるのが「良い会議」そいなイメージがないでしょうか?そんな文化担った結果、会議の決定事項はわかるけど決定事項に「頭ではわかるけど気持ちがついていかない」「どうしても腑に落ちない」といった状態に陥った人も少なからずいるように思います。まさにエンゲージメントが低い状態です。
組織のエンゲージメントの観点からは、一見無駄に思える雑談が、意外に大切なモノだったりします。気持ちよく仕事をしていくには、ロジックのすり合わせだけでなく、雑残や対話を通じた気持ちのすり合わせも重要です。一般に、対話の頻度が高く、深い対話がなられている組織は、エンゲージメントが高くなります。
10.おわりに
本書には、さまざまな会社の取り組み事例なども記載されており、具体的な取り組みについても記載がされています。これからの組織運営にエンゲージメントを高めることは職種に関係なく日本の企業の課題となるでしょう。
組織やチームのメンバーが自ら考え、答えを見出すために話し合って、行動に繋げていくことが必要です、すべてはオープンな対話から始まっていくと思いました。
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