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日頃の思いを書いていきます。

(本の感想)前編 介護再編 武内和久 藤田英明

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■著者の紹介

武内和久 たけうち・かずひさ
1971年生まれ、福岡出身。東京大学法学部卒業後、厚生省(現厚生労働省)に入省。在英国日本国大使館一等書記官、厚生労働省大臣官房、厚生労働省医政局等を経て、福祉人材確保対策室長を最後に退官。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社アドバイザー(厚生労働省参与、東京大学非常勤講師等)等を歴任。共著書に『投資型医療』(2017年、小社刊)、『公平・無料・国営を貫く英国の医療改革』(2009年、集英社新書)、『2025年、高齢者が難民になる日』(2016年、日経プレミアム新書)など。

藤田英明 ふじた・ひであき
株式会社日本介護福祉グループ創業者。株式会社CARE PETS代表取締役(犬や猫の訪問介護・看護やペットシッターサービス)、株式会社けあらぶ代表取締役、医療法人杏林会八木病院理事、株式会社Caihome取締役(介護と学童保育の融合)、株式会社トリプルダブリュー顧問(排泄予知IoTの「Dfree」を開発)。明治学院大学社会学社会福祉学科卒業(専門は精神障害者支援)後、社会福祉法人特別養護老人ホームに就職し介護職員兼生活相談員として着任。その後夜間対応型デイサービスで起業し、株式会社日本介護福祉グループを設立、全国850事業所を開設。内閣府規制改革会議に参画(介護・保育ワーキンググループ)。著書に『社会保障大国日本』(幻冬舎)がある。

 

■本書の概要

厚労省官僚と介護事業所経営者が介護の知られざる現状を生生しく知られざる現状を明らかにし、対策を提言します。介護士の不足、あなたの親とあなたは介護を受けれるのか?介護の現場は外国人労働者ばかりになる?虐待されない介護施設は?介護仰臥位のIT化とは?

 

■本の感想

 1.介護職の不足に対応出来なければ日本は衰退する

介護業界全体を見ると、人手不足は深刻な状況にあります。財団法人「介護労働安定センター」が公表している「2017年度介護労働実態調査」によると「従業員が不足している」と答えた介護事業所は66.6%で、4年連続で不足感が増加しています。不足理由は「採用が困難」が88.5%で「離職率が高い」が18.4%となっています。

その一方で、現在、180万人もの介護労働者が現場で働いていることも事実です。すでにあらゆる産業の中で最も従事者数が多い職種のひとつになっており、今後も確実に伸びていきます。

厚生労働省によると、2025年には253万人の介護労働者が必要と試算されており、1年に10万人のペースで増やしていかないといけません。

2000年に介護保険制度が始まった時は要介護者は200万人でしたが、現在は660万人になっています。このニーズの急増に担い手が追いついていないのです。今の介護職員の増員ペースで行けば2025年には約38万人も不足すると予測されています。

 

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2.高級有料法人ホームだから安全・安心というのは神話

介護施設には様々な施設があり、そのクオリティはピンからキリまであります。たとえば、入居金に数千万払う有料法人ホームもあれば、毎月9万円程の費用で入居できる住宅型有料老人ホームまで、その価格帯は様々です。

では、一般の老人ホームと高級老人ホームでそこで働く職員の質には差があるのか?というと「そうではない」というのが現実です。その理由は、高級老人ホームも安い老人ホームもそこで働く「介護職の給与はほぼ同じ」 であり、どの施設も人材不足です。介護職の給与は老人ホーム運営事業者に介護報酬として支払われた中から支払れます。そのため、支払われる金額は結果的に同水準になって来てしまうのです。結局、建物が高価であろうが安価であろうが、コスト回収期間は変わらないため、従業員にさける賃金の総額は同じような水準になり、人件費も同じになるざる得ないのです。

 

3.100%虐待は起きないと言える介護施設は100%存在しない

どんな介護施設でも虐待が起こる可能性があります。施設の組織編成に問題があることも背景のひとつです。現場の状況として各施設で提供される介護の質はその施設長に委ねられている現状です。介護事業者による事業拡大が続いている中で、若く経験の浅い人が施設長を任される事が増えてきている日本の介護業界において、様々な問題が起きる可能性があります。たとえば

①マネジメント経験がない人が施設長に就任する

②施設長の役割が分からない

③スタッフから信頼されていない

④現場のマネジメントができない

⑤上司から数字を求められ、部下からは働きやすさを求められる

もともとは介護保険制度がスタートする前は「介護は福祉である」という概念が強い分野でした。それが作用した結果「お上意識」が非常に強い社会福祉法人が多く存在し、結果として、経営を改善するとか人の能力を引き出す点で意識が低くなっている法人も散見されます。これがリアルな社会福祉法人の現状です。

 

4.介護の目的には自立と尊厳

そもそも介護の目的は何なのでしょうか?

介護という言葉は介助と看護の合成語として生まれました。その目的としては一般的にには「自立の支援」と「尊厳の自立」の2つが主な柱です。この2つは介護保険法にも明記されています。ところが、この「自立の支援」と「尊厳の維持」は人によって捉えられ方が違います。抽象的、哲学的な概念であるため無理もありません。何を持って自立とするか?リハビリやトレーニングをして、自分で歩けるようになるのは自立と言えますが、では、認知症の高齢者にとって自立とは何なのか?歳とともに衰えていくさまざまな身体的機能を半ば強制的に維持向上させ、自立を向上せ、自立を強要することが意味のあることなのかは十分に考えなければなりません。もちろん、自分のことは自分で出来ることが自立の基本ではありますが、それをどう捉えるのかは一概には定義できません。自立と言っても身体ではなく、精神的な側面や、生活面も考慮する必要があいります。また、そもそも人間にとって尊厳とは何を指すのでしょうか?その人のプライドを維持し、アイデンティティを担保し、その人らしい生き方が出来るということかもしれません。しかし、それが具体的にどういう状態を指すのかというと、個々の人の人生観や死生観の問題になってきます。私達は常にこの問題について考え続け、追求し続けなければ、問題の本質に迫ることはできません。

 

 5.介護業者の”黒字倒産”が常態化する

 介護業界の人材不足が深刻の度合いを深めていることは、さまざまな現象から見て取れます。特に首都圏近郊でこの傾向は顕著です。実は高齢者はもともと人工集積地でない地方都市から始まっていて、そうした地域では、今はピークを過ぎて高齢化率が下がる局面に入ってきています。東北や山陰地方などがそうです。東京での介護職の有効求人倍率は3倍ですが、夜勤有りの介護職募集となると10倍以上に跳ね上がります。経営的に黒字でも倒産するし、運良く人が集まっても経済的に苦しいというのが、大都市の介護事業者の現状です。

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6.達成感が得られにくい介護の仕事

医療の場合は、治療して治ったかどうか、私傷病の回復の具合が目に見えてわかります。ところが介護の場合は心身の状態が回復することはまれで、多くは「維持」です。
 身体的にはまだ見えやすいのですが見えやすいですが、精神的にもとても分かりにくいのです。目に見えにくいものを評価していくという物差しや方法論が、まだ介護の分野にはありません。たとえば、介護保険対象のうち、要介護1,2、3程度の軽度の方や、認知症を患っている人の場合では対応が違います。身体的には介助を必要としなくても、精神的な支援が必要ですが、そこが何をもって改善されたかと判断すでばいいかもわかりません。逆に要介護4,5の人のように、改善が見込めない人のケアをしていった結果、何が良かったのかを検証することも大変難しいことです。このことが介護職の精神的に負担をかけるに違いありません。達成感を短い時間軸で得ることが出来にくい仕事なのです。

その上、世代間ギャップでモチベーションが得にくいという問題もあります。現在の高齢者の人たちは物心ついたころからすでに食料の心配をすることがなく、時代的にも高度成長期の時期を働き盛りとして謳歌してきたので、非常にプライドが高い面があります。権利意識が強く、介護職への要求も高くなりがちです。そうなると、介護職の人達からすると「プライドが高く扱いづらい」「わがまま」と感じてしまうのです。そうした理由もあって、介護職として働きたいと本気で考えている人は、高齢者施設から障害者施設のほうに流れています。介護施設とは比べ障害者施設では求人の10倍の応募がるということもザラです。障害者施設で働いていると「大変な仕事をしている」「素晴らしい仕事をしている」とゆう理解を周囲から得やすいという面があるのも事実です。介護施設では、高齢者から下に見られて、使われていると感じてしまうのに対して、障害者や障害児をケアをするときには自分がケアを施すという一種の満足感がえられるというような、潜在的な意識が影響しているといったこともあるでしょう。そうした考え方の是非は別として、それがひとつの現実です。

 

 今回は前編として後編に続きます。

 

 

(本の感想)後編 組織の未来はエンゲージメントで決まる 株式会社アトラエ代表取締役 新居佳英 グロービス経営大学院講師 松林博文

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 この記事については後編になります。

前半についてはリンクを張っておきますのでそちらをご確認下さい。

 

kazu0000.hatenablog.com

 

 7.エンゲージメントを左右する9つのキードライバー

職務・・・職務に対して満足度を感じているか?

自己成長・仕事を通じて、自分が成長できていると感じているか?

健康・・・従業員が仕事の中で、過度なストレスや疲労を感じていないか?

支援・・・上司や仕事仲間から、職務または自己成長の支援を受けているか?

人間関係・上司や仕事仲間と良好な関係が築けているか?

承認・・・周りの従業員から認められていると感じているか?

理念戦略・企業の理念・戦略・事業内容に対して納得・共感できているか?

組織風土・企業の組織風土が従業員にとって納得・共感しているか?

環境・・・給与、福利厚生、職場環境といった従業員を取り巻く会社環境に満足しているか?

この9つのキードライバーの状態にはばらつきがあります。

たとえば「職務」の満足度は今ひとつだけども「支援」や「人間関係」が非常に高く、全体としてみるとエンゲージメントが高い、というように9つのドライバーの影響が重なり合ってエンゲージメントを決定づけるのです。

良い結果を出しているドライバーをさらに強化するという道筋もありますし、悪い結果を示しているドライバーに対して対策を取るという道筋もあります。

 

具体的にどのような行動や慣行、出来事が、9つのキードライバーを動かし、エンゲージメントに影響を与えるか見てみましょう。

 

支援・・・上司や仕事仲間から、職務または自己成長の支援を受けているか?

効果的に1ON1ミーティングとは

最近、マネジメントの取組みとして多くの企業に導入が広がっている1ON1ミーティング。上司と部下が定期(週1月1)で話し合う場を設け、仕事の中で課題の確認、相談、振り返りを行います。「支援」のドライバーを動かす施策であり、エンゲージメントを高める効果があるそうです。実際に効果を上げている職場も多いでしょう。

1ON1ミーティングが機能している場合とそうでない場合があります。機能しない理由として多くの企業から聞くのが「1ON1ミーティングの間、大半は上司がしゃべてている」という話。1ON1ミーティングは部下と上司が8対2くらいが良いとされています。このミーティングが機能するかどうかは、もともと上司と部下に信頼関係があるかどうかに左右されます。信頼関係が無い中で行っても部下は安心してしゃべることができません。それでは、どのように行えば有効でしょうか?ひとつ有効と考えられるのは受ける側(部下)にミーティング相手を選んでもらうのです。「この人に相談したい」という相手を選んでもらえば正直に話し合える1ON1になりやすくエンゲージメントにも良い影響があるでしょう。

 

承認・・・周りの従業員から認められていると感じているか?

上司に成果をもっていかれてしまう

仕事で成果が出た時に会社で称賛されたり、社外から注目され取材されたりするのが、現場のスタッフではなく上司になることが往々にしてあります。自らの仕事の成果が十分に承認されていない、上司に成果を横取りされた、といった感覚にになったらエンゲージメントが損なわれるでしょう。

そもそも、個人の成績がはっきり可視化される営業職などは異なり、大勢の人が関わってものづくりを行う職種においては、成果が誰のものなのかは見えにくくなります。顧客とやり取りするフロントの人たちは、商品のサービスに対する賞賛の声を聞く機会もありますが、開発に携わるクリエイティブ職の人たちはそのような機会が少なく、一方で不具合の報告などに日々接するため、自分の仕事が「承認」されているという感覚が弱くなりがちなようです。クリエイティブ側の人たちを称賛する機会を設ける、商品やサービスを好意的に評価する顧客との機会を提供する、といった取り組みが考えられます。特に、上の立場にある人が「成果を横取りされた」と部下たちに感じられないように自ら現場のスタッフを承認する姿勢を示していることが重要と言えるでしょう。

 

8.キードライバーは互いに相関する

9つのキードライバーは互いに相関します。その項目をいくつかの小項目似ブレイクダウンして分析すると、特に相関が強いいくつかのグループに分類できそうなことがわかっています。

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このような相関関係を踏まえることで、複数のドライバーが課題を示唆しているとき、どこから手を付けると高い効果が見込めるか、といったことが見えてきます。

 

8.組織改善は自社で自ら取り組むべき課題

組織の改善は、組織の人達自身で取り組むべきものです。組織改善を外部のコンサルタントに任せてはいけません。エンゲージメント、すなわち「自発的な貢献意欲」を高めることが組織改善の核心なのです。社員が当事者意識を持って組織改善に取り組むことは、エンゲージメントを高めることに直結します。答えは外にではなく、中にあるのです。

組織改善は、本来、組織づくりは終わらない継続的な取り組みです。決して外部任せにせずに、自分たちで取り組みをしていかなければなりません。だからこそ、社員が自ら声をあげること、声をあげるカルチャーをつくることが不可欠です。

グーグルでは、全社員が経営者に対してどんなことでも質問できる、「ask me anything」というセッションが定期的に開催されています。突拍子もないアイディアも、ちょっとした時間の無駄も、許容しながら、日頃から社員が自由に声を上げられるカルチャーを育てていくこと。そのような、より自然な、より人間的なカルチャーの中から、未来が生まれていくのではないでしょうか?

 

9.組織はオープン化し、マネジメントは「支援」になる

エンゲージメントの向上が大きな課題となっている今日、マネジメントのあり方に大きな変化が求められます。多くの日本企業は、現場経験を積んだ人がやがてマネジャー(管理職)になり、出世を重ねれば経営者になるというキャリアパスがごく普通に存在します。しかし、野球でホームランをうてる人が、監督も上手にできるとは限りません。求められる能力が異なるからです。技術力が一番高いからマネジメントするとか、営業力が高いからマネジメントするというのは、正しい人員配置ではないように思えます。上の言うとおりに動くことを求める組織のあり方は、もはや完全に終わりをつげています。社員を囲い込んでいた「壁」は、他者でもやっていける力を持った優秀な人材にとっては、もはや存在しないようなものです。人材が流動化すると「壁」はくずれ、真ん中に立っている「旗」つまり、ビジョン、理念、ミッションなどの価値観が魅力的な組織に人が集まるようになります。

また、ビジネスにおける「価値の生み出し方」も変化していきます。図はさまざまな仕事で価値を生むための行動を、行動、管理、協働、創造の4つの要素で整理したものです。業種や職種によって具体的な内容に違いはあるものの、基本的には、どのような仕事もこの4つ要素で成り立つとされています。

 

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ビジネスパーソンの方に、日常の仕事をこれら4つにどのように配分されているかを描いてもらうと、多くの場合、「競争」と「管理」の領域に偏った図ができます。(図のイメージ①)今日のビジネスでは「協働」や「創造」の仕事が重要となっています。図の右下に 偏った状態から、左上の方へと仕事の比重を移していくこと(図のイメージ②)が求められており、それに合わせてマネジメントも変わって行かなければなりません。メンバーに気持ちよく働いてもらうことが大切でメンバーを支援する「サーバントリーダー」や「パートナー」「コラボレーター」が、これからのマネジャーの役割になります。

 

10.ムダや遊びを許容し、対話で気持ちをすり合わせる

マネジメントの変化は、ビジネスにおけるコミニュケーションにも求められています。図はグループ内におけるコミュニュケーションのモードを、テーマと雰囲気の固さ、柔らかさを軸としたマトリックスで表したものです。

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多くの日本企業で不足しているのが、ビジネスに直結するテーマについて上下・立場を意識しない緩い雰囲気で話し合うコミニュケーションです。固い雰囲気でのコミュニュケーションばかりが重視されているように感じます。

たとえば、職場での何気ないおしゃべりが無駄話への許容度がさがり、仕事上の要件をテキパキと伝えて忙しく動き回るのが「頑張っている」とみなされる傾向が強まったのではないでしょうか?無駄話にイライラする人がいないでしょうか?会議が時間通りに進んで、脱線せずに終わるのが「良い会議」そいなイメージがないでしょうか?そんな文化担った結果、会議の決定事項はわかるけど決定事項に「頭ではわかるけど気持ちがついていかない」「どうしても腑に落ちない」といった状態に陥った人も少なからずいるように思います。まさにエンゲージメントが低い状態です。

組織のエンゲージメントの観点からは、一見無駄に思える雑談が、意外に大切なモノだったりします。気持ちよく仕事をしていくには、ロジックのすり合わせだけでなく、雑残や対話を通じた気持ちのすり合わせも重要です。一般に、対話の頻度が高く、深い対話がなられている組織は、エンゲージメントが高くなります。

 

10.おわりに

本書には、さまざまな会社の取り組み事例なども記載されており、具体的な取り組みについても記載がされています。これからの組織運営にエンゲージメントを高めることは職種に関係なく日本の企業の課題となるでしょう。

組織やチームのメンバーが自ら考え、答えを見出すために話し合って、行動に繋げていくことが必要です、すべてはオープンな対話から始まっていくと思いました。

 

(本の感想)前編 組織の未来はエンゲージメントで決まる 株式会社アトラエ代表取締役 新居佳英 グロービス経営大学院講師 松林博文

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■著者の紹介

新居 佳英(あらい・よしひで)
株式会社アトラエ 代表取締役CEO
上智大学理工学部を卒業後、1998年より黎明期のインテリジェンス(現パーソルキャリア)に新卒入社。2000年には戦略子会社インサイトパートナーズを立ち上げ、同社代表取締役社長に就任。その後、2003年10月にアトラエを設立。IT/Web業界に強い成功報酬型求人メディア「Green」、機械学習を活用したビジネスパーソン向けのマッチングアプリ「yenta」、組織におけるエンゲージメントを定量的に可視化することで組織改善を可能とするSaasツール「wevox」を展開。創業以来「意欲ある社員が無駄なストレスなく働ける組織作り」を徹底し続け、2016年には東証マザーズへ上場、2018年には東証一部への市場変更を実現する。

松林 博文(まつばやし・ひろふみ)
グロービス経営大学院講師
海外営業を経てミシガン大学MBA修了後、ジョンソンで中長期戦略立案、マーケティングを担当。日本ファミリービジネスアドバイザー協会(FBAA)特別執行役員。個の創造性発揮、次世代型組織デザイン開発をライフワークとする。 著書、共著書に『[実況]マーケティング教室』(PHP研究所)、『クリエイティブ・シンキング』『グロービスMBAマーケティング』(以上、ダイヤモンド社)、『MBA経営キーコンセプト』(産能大学出版部)、『ビジネスに出る英単語』(講談社)、翻訳書にはアンジャン・V.セイカー『バリュー・クリエーター』、ジェリー・ワイズマン『パワー・プレゼンテーション』(以上、ダイヤモンド社)などがある。趣味はサーフィン&ワイン&トロピカルアート。

 

■本書の概要

最近よく聞くようになったエンゲージメント。エンゲージメントとは何か?ということから組織でそのエンゲージメントをどのように高めることで組織力の向上に繋がっていくかということを丁寧に解説しています。入門書として最適な本となっています。

 

■本の感想

1、初めに

「どうすれば優秀な人材を定着できるか?」「どうすれば社員が意欲的に仕事に取り組むのか?」これはどの組織もが抱える大きな課題です。背景には少子高齢者化によって若手優秀層の採用競争が激しくなってきていることや、人材の流動化が加速していること、さらには知的生産性社会の到来による競争環境の変化、若者たちの価値観に従来の組織が合わなくなっていることなどがあるのだと思います。

従来のマネジメントはミスが出ないように「管理」するという意味合いを強く持っていました。しかし、これからの時代のマネジメントは、社員が意欲を持ち、知恵や創造性を遺憾無く発揮するため「環境づくり」や「サポート」へと変わっていかなければなりません。

「エンゲージメント」という概念は「組織や職務との関係性に基づく自主的貢献意欲」と定義されます。そして残念ながら日本企業では一般的にエンゲージメントが低いという調査結果が出ています。エンゲージメントが低い状態では、組織のパフォーマンスや生産性が高まるはずもなく、このことはすでに複数の調査機関や研究機関によって明らかにされています。働き方改革などでの労働時間の抑制などでは根本の解決にはならないのです。

 

2、やる気のない社員が7割 日本企業の驚くべき実態

日本では「やる気のない社員が7割を超えている。この実態を皆さんはどう思うでしょうか?これは世界的な調査会社ギャラップによる調査で示された値です。2017年5月に発表されたその調査結果を日本経済新聞は下記のように報じています。

 

日本経済新聞

世論調査や人材コンサルティングを手掛けるギャラップ社が世界各国の企業を対象に実施した従業員のエンゲージメント(仕事への熱意度)調査によると、日本は「熱意あるれる社員」の割合が6%しかいないことがわかった。米国の32%と比べて大幅に低く、調査した139ヵ国中132位と最下位クラスだった。企業内に著問題を生む「周囲に不満を撒き散らしている無気力な社員」の割合は24%「やる気のない社員」は70%に達した。

 

こうした傾向を見られることに加えて、人手不足と採用難が企業を襲ってきます。2019年3月卒業予定の大学生・大学院生の大卒求人倍率は1.88倍で就職氷河期と言われた2000年3月卒の0.99からほぼ倍増しており、とりわけ従業員300人未満の中小企業では9.91倍の過去最高の数値となっています。

「人手不足倒産」も増えています。帝国データバンクによれば、従業員の離職や採用難により人手を確保できず、収益が悪化したことを要因とする倒産は2013年から17年までの5年間で2.5倍に増加しているそうです。

企業にとって、人材の確保・維持がかつてないレベルで大きな課題となっていると言えるでしょう。そんな状況にもかかわらず、日本企業の全体傾向としては意欲のあふれる社員は僅かで、やる気のない社員が多く、しかも若手が次々と辞めてしまうという状況が生じているのです。

 

3、エンゲージメントの定義

コンサルティング会社ウイルス・タワーズトソンによるエンゲージメントの定義

〜従業員の一人ひとりが企業の掲げる戦略・目標を適切に理解し自発的に自分の力を発揮する貢献意欲〜

エンゲージメントには厳密にいうと2種類あります。

①従業員エンゲージメント

企業・組織と個々の社員の間の関わり合い。組織に対する自発的な貢献意欲

②ワークエンゲージメント

「仕事の内容」と個々の社員との関わり合い。主体的に仕事に取り組んでいる心理状態を表したもの。

従業員エンゲージメントが高くてワークエンゲージメントが低いということを簡単に説明すると「会社には愛着があるが仕事には身が入らない」状態のことです。

逆にワークエンゲージメントが高くて従業員エンゲージメントが低いというのは「仕事は好きだけど会社が嫌い」という状態のことです。

特に区別することが必要ない場合は総称してエンゲージメントと呼びます。

 

4、従業員満足、モチベーション、ロイヤルティとの違い

職員満足度

 職場環境や給与、福利厚生などへの満足度=組織が与えるのも

モチベーション

 行動を起こすための動機=個人が感じるもの

ロイヤルティ

 組織に対する帰属意識、忠誠心=上下関係が生み出すもの

エンゲージメント

 主体的・意欲的に取り組んでいる状態=相互の対等な関係に基づくもの

 

5、心理的安全性とエンゲージメント

Googleは2012年から約4年もの歳月をかけて労働改革プロジェクト「ポロジェクト・アリストテレス」を行い、チームが成功するための5つの鍵を特定しました。

心理的安全性

不安や恥ずかしさを感じることがなくリスクある行動を取ることができるか

②信頼性

限りある時間を有効に使うため、互いに信頼して仕事を任せ合うことができるか

③構造と明瞭さ

チーム目標や役割分担、実行計画は明確化

④仕事の意味

メンバー一人ひとりが自分に与えられた役割に対して意味を見出すことができるか

⑤仕事のインパク

自分の仕事が社会全体に対して影響力を持っていると感じられているか

 

この5つの中で最も重要な要素が「心理的安全性」だと結論付けられています。

 

6、なぜ日本企業ではエンゲージメントが低いのか?

日本では長い間「人が辞めない」ことを前提として組織運営をしてきました。離職という問題がほとんどなかったため、エンゲージメントを意識する必要もありませんでした。そのためエンゲージメントを意識している経営者は非常に少ないと感じています。

日本企業においてエンゲージメントが低い背景には色々な要因が考えられますが、多くの企業では課題認識が十分ではないように感じます。しばしば見られるのが、この問題を表面的なワークライフバランスや働き方の問題に矮小化して捉えてしまう傾向です。

働き方改革」の議論でも、いわゆるブラック企業の問題などを背景に長時間労働をそうやって是正するか?といった点にばかり目が向けられているように思います。長時間労働が過労死を招いたり、メンタルヘルスの問題につながるのは大きな問題です。しかし、日本の企業組織が抱えている課題は、長時間労働を是正すれば解決するのでしょうか?働き方の問題は、労働時間(労働の量)だけではなく、エンゲージメントの強さ(労働の質)も併せて考える必要があります。この2つのマトリックスが下記のようになります。

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今般の「働き方改革」で焦点が当てられているのでは右下の「ブラックワーカー」層、エンゲージメントが低く労働時間が長い人たちです。本来は、労働者には、職業選択の自由があり、ブラックワーカーとして働く必要はありません。しかし失業不安や将来不安などから実質的には会社の言いなりになり働く以外に選択肢がない(と思い込んでる)状態の人が少なからずいます。この層の働き方には改革が必要です。

しかし、労働時間が長くてもエンゲージメントの高い人たちもいます。右上の「ビジネスリーダー」層です。起業家や経営者層には長時間労働の人は少なくありません。スタートアップ企業では、時間を忘れて仕事に没頭するような、意欲あふれる若者が活躍しています。このような人たちにとって、画一的な基準で労働時間を制限されたくないという人もいるでしょう。これは、彼らの仕事や組織に対するエンゲージメントが高いからです。「働き方改革」が単なる「長時間労働の抑制」になってしまうと、このビジネスリーダー層の人たちの働き方が制約される遅っれがあります。

また、ブラックワーカー層についても、本質的な課題はエンゲージメントの低さにあります。エンゲージメントの低さにあります。エンゲージメントの低い状態を放置して労働時間の短縮を図るだけでは、いわば対処療法に過ぎず、企業活動や日本経済にプラスの影響は生まれないのです。

エンゲージメントを高め、生産性や定着率を高めるような好循環を生み出すことこそ、働き方改革の最優先課題ではないでしょうか?

 

今回は前編として後半に続きます!!

 

(本の感想)後編 図解 眠れなくなるほど面白い社会心理学 亀田 達也さん

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この記事は後編になります。前編については下記の記事を御覧ください。

 

kazu0000.hatenablog.com

 5.他人の存在は作業にどう影響する?

周囲に自分以外の人がいることで、やる気が出て作業効率が高まるというケースがあります。この現状に目をつけトリプレットは、糸巻き実験を行いました。この実験は釣り糸を巻く作業が一人で巻くのと2人で巻くのでそのスピードがどれだけ変化するかを比較しました。結果は一人で巻くより2人で巻いたほうがスピードが早くなることが判明しました。この現象をF・Hオルポートはこうした現象を「社会的促進」と名付けました。

しかし、必ずしも他者の存在が良い結果を生むとは限りません。逆に他人がいることで作業の効率が低下する現象を「社会的抑制」と呼びます。

ではなぜ社会的促進と社会的抑制が起きるのでしょうか?ザイアンスはそれらを分ける鍵は個人の熟練度にあると考えました。物事に対して練れているかどうかで社会的促進と社会的抑制のいずれかが起こるということです。つまり社会的抑制を避け促進効果を生むためには、その物事に対して経験を積むか知識を高めることが必要になるわけです。

 

6.人は自分の行動に一貫性を持ちたがる

訪問販売員に「話だけでも聞いてもらえませんか?」と言われ、断るつもりでしぶしぶ話しを聞いていたらいつの間にか商品を購入していたという話はよく聞きます。このように相手が承認しやすい小さな要求から段階的に要求を大きくし本来の要求を成功させる技術を「フット・イン・ザ・テクニック」と言います。

また、小さな要請を承諾したことで「自分がいいと感じた要請は受け入れるべき」という一貫性を持ちたいという心理が働き、承諾率があがります。こうした心理のことを「一貫性欲求」といいます。

 

7.自分は一般的と人は思いがち

無意識に人は「自分が思っている意見は適切である」と考え、たとえその意見が間違っていたとしっても「他の人が同じ立場なら同じ判断をしたはず」自分の意見や判断を正当化します。このような現象を「フォール・コンセンサス効果」と呼びます。この効果は自分と似た価値観や経験を持つ人と協議する環境や、自分を選択したことを重要視してことに合意を得ようとする心理、自分の行動は他者によって引き起こされたのと同じ状況なら他者も同じ行動を取るであろうという意識、自分は価値のある人間でありその判断は間違いないという思考といった複数の要因が重なることで発生すると考えられています。

ロスらは、実際に行動を選択する状況でもフォールス・コンセンサス効果が生じると考え、ある大学でサンドイッチマン実験」を行いました。生徒に「サンドイッチマンの広告板をぶら下げてキャンパスを歩いてほしい」と依頼し、この依頼に同意するかどうかを回答してもらいます。さらに他の学生に同じ依頼をした場合に同意するかどうかも回答してもらいます。実験の結果、依頼に同意した学生の多くは他の学生も同意すると回答し、逆に拒否した学生の多くは他学生も拒否するだろうと回答しました。好みや意見の考え方だけでなく、行動選択の状況でもフォース・コンセンサス効果が生じることが証明されました。

 

8.人はどのように説得されるか?

説得とは4つの過程で成り立っている。

①注意

まずは、送り手のメッセージが相手の注意を引くこと

②理解

次に送り手のメッセージが相手に「理解」されること

ここで情報が相手にとって価値を持つものであれば次に繋がります。

③受容

この段階で相手は送り手のメッセージを受け入れたことになります。

④記憶

最後にその説得内容が相手に「記憶」されれば完了になります。

 

さらに受け手側にあまり専門知識がない場合に良い面だけ提示する「一方的メッセージ」が有効反対に受け手側に知識がある場合は、悪い面も含めて提示する「両面的メッセージ」が有効であるとされています。

また、説得において注意しなければならないことが、心理的リアクタンスです。これは説得された内容に関し、受け手側が自分の驚異は大きいと感じると、あえて言われた事とは反対の行動をとって、自由を回復しようとする心理プロセスのことです。

 

9.囚人のジレンマとは?

人は生きていく中で様々なジレンマ(板挟み状態)に直面します。そのひとつを説明する事例に、囚人のジレンマゲームがあります。

ある事件で共犯の疑いが掛けられた2人の男たちに対し、検事がある司法取引を持ちかけるのです。

①ふたりともこのまま黙秘し続けたら、どちらも懲役3年

②片方が自白したら、自白したほうが不起訴で、もう一方が無期懲役

③両方とも自白したらともに懲役10年とする

この実験について相手がどう出るか分からない状況で、悩みは深まるでしょう。しかしこのゲーム内容を整理してみると自白してしまった方が結果的に結果的に特になるのです。

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このジレンマで生じるのは相手がどんな行動をとるか、信用できないからにほかなりません。そして、もうひとつ考えなければならないのは、相手の選択に対して黙秘するというのは「協力する」という意味合いを持つということです。結果的に自分が存すいる可能性があっても人は協力するということがあります。これは同じゲームを、1回限りでなく何度も繰り返し行うことで謙虚に表れます。このことから人は長く付き合う相手に対し、協力的になりがちだという側面が見えてきます。

 

10.囚人のジレンマを用したコンピューター・トーナメント

囚人のジレンマでは、対戦を何度も続けると協力的な関係が出てくると言われています。この関係についてコンピューターを使って実証したのが、国際政治学者のアクセルロッドです。彼はゲーム理論の専門家たちに呼びかけて戦略プログラムを募集しました。「コンピューター・トーナメント」と呼ばれるこの対戦で結果的に一番高い成績をだしたのが「応戦戦略」という最も単純なプログラムでした。応戦戦略とは、最初は協力し、その後は相手が前回取った手と同じ手を自分も取るという戦略です。

アクセルロッドは、横線戦略の4つの特徴を上げています。

①相手を裏切らない上品な戦略であること

②裏切りに即座に反応すること

③相手の協力にも即座に協力すること

④意図が相手にも分かりやすい

「目には目を、歯には歯を」という言葉も、この応戦戦略を表しています。

 

おわりに

この本はひとつの項目が2ページづつの構成になっており難しい社会心理学を分かりやすい構成になっています。また、図解もされており文書と図のバランスがとても良いです。聞いたことのある心理学については更に深く、知らない心理学についてはわかりやすく記載されており、とてもおすすめの一冊となっています。

 

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(本の感想)前編 図解 眠れなくなるほど面白い社会心理学 亀田 達也さん

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■著者について

1960年生まれ。東京大学大学院社会学研究科修士課程、イリノイ大学大学院心理学研究科博士課程修了、 Ph.D(心理学)。現在は東京大学大学院人文社会系研究科社会心理学研究室教授。著書に『モラルの起源ー実験社会科学からの問い』(岩波書店)、『合議の知を求めてーグループの意思決定』(共立出版)、共編著に『複雑さに挑む社会心理学ー適応エージェントとしての人間』(有斐閣)、『「社会の決まり」はどのように決まるか』 (フロンティア実験社会科学6、勁草書房)、『文化と実践ー心の本質的社会性を問う』(新曜社)、『社会のなかの共存』(岩波講座 コミュニケーションの認知科学 第4巻、岩波書店)などがある。 --このテキストは、tankobon_hardcover版に関連付けられています。

 

■本書の概要

社会心理学とは、社会の中で人々の心の動きや行動の法則を解き明かし、なぜそう感じ、そう行動するのかを研究する学問だと著書は書いています。

本書では社会心理学を社会現象、組織・集団、職場、個人と対人認知、社会のあり方の5項目に分けてその行動となぜそのような行動をするのかを分かりやすく記載しています。社会心理学を学び、その視点から世の中を見ていくことが、きっと新しい発見があるはずです。その中でも私に響いた心理学を何個か記載していきます。

 

■本の感想

1、見て見ぬ振りをするのはなぜか?

1964年、ニューヨークの住宅街で、深夜に女性が深夜に自宅の前で襲われ、刺殺される事件がありました。アパート住民38名がこの騒動に気づき中には窓から事件を目撃した者もいました。

しかし、誰一人として彼女を助けようとする人はいなかったのです。なぜでしょうか?マスコミは「大都市の冷淡さや他人への無関心が背景にある」と論じましたが、心理学者のラダネとダーリーはそれだけでなく多くの目撃者がいたことがかえって人々の行動を抑制したのではないか?と考えます。

この節を確かめるために行った実験が「傍観者実験」です。この実験は被験者である学生に集団討論会への参加を依頼。被験者は個室でインターフォンで他の被験者と共に意見を求めるように指示されます。すると、突然参加者の一人が発作を起こし助けを求めてくるというものです。

結果は、参加者が2人だと3分以内に全員が外にいる研究者に事態を報告したのに対して6人では4分経過しても60%の人しか報告をしなかったのです。

つまり、多くの他者がいる時ほど、人は援助行動を起こしにくいという傍観者効果が証明されたわけです。

 

2.あおり運転をしやすい人の特徴とは?

近年、あおり運転が社会本題になっています。あおり運転は車線変更や追い越しなど、些細なことが原因で起こりやすいといわれています。些細な行為で攻撃行動に出てしまう人はどのようなタイプの人でしょうか?

これは社会心理学的には「敵意帰属バイパス」が強い人といえるかもしれません。敵意帰属バイパスとは相手にされた行為を、敵意や悪意から生じたものと捉える傾向のことです。

実際、敵意帰属バイアスの強い人ほど攻撃行動に出やすいという研究結果もあります。A.ドッジらは殺人、暴行、強盗といった犯罪で逮捕された青年を対象に、一般的には敵意がないと考えられる行動に対し、彼らがどのくらい敵意を見出すかの調査を行った所、敵意バイパスの強い少年ほど、犯罪件数も多いことが明らかになりました。このように敵意バイパスと攻撃行動には密接に関係があるのです。

 

3.人はなぜ組織に服従してしまうのか?

私達はグループでなにか決める時に本心では違うと思っているのに、周囲に合わせて同調をして同調してしまうことがあります。こうした上辺だけの同調を「外面的同調」といいます。これとは逆に、周囲の意見が正しいと思って同調することを「内面的同調」といいます。外面的同調は服従行動においても機能します。たとえば企業ぐるみの不正などは、服従によっておこる事件といえるでしょう。本心では正しくないと思っていても「会社のためである」などの心理から、命じられるまま不正行為に加担してしまうのです。

フレンチとイレブンはアイヒルマン実験で見られる権威への服従を引き起こす力を「社会的勢力」と呼び5つに分類しました。

①報酬勢力

 報酬を与える事ができる立場にいる者

②正当勢力

 上司、先輩など自分より地位が高いと思う相手

③強制勢力

 罰を与えることが出来る立場

④専門勢力

 法律、医療、文化、政治といった専門家

⑤参照勢力

 好意を抱いている相手、尊敬している相手

普段は善良で責任感のある人でも、こうした社会勢力の下に組み込まれると、それが間違っているとわかっていても服従してしまうことがあるのです。

 

4.集団対立はどのように起こるのか?

人は自分が所属するチームには思いやりを持ち、他人が所属するチームには敵愾心【てきがいしん】を抱きます。こうした集団の対立を「集団間葛藤」と呼びます。

この集団葛藤を解消するために3つの段階で構成された「泥棒洞窟実験」を行いました。第一段階として共同生活をして仲間意識を高める。第2段階としてその集団同士を対立させ集団葛藤を発生させいました。その集団間の人間関係を調べるとほとんどの人が内集団の仲間を友人と呼びました。つまり集団葛藤が生じている場合は、仲間への連単意識、相手集団への敵意識が強化されていたのです。第3段階では様々な方法で集団間葛藤の解消を目指しました。しかし懇親会などでは小競り合いが勃発し集団間葛藤の解消には至りしませんでした。このチームに個別では解決できず協力しないと解決できない上位目標を与えた所、お互いに敵意をもっていたリームが協力し外集団への敵意感情が薄れました。集団間で生じた対立「集団間葛藤」については交流会など、集団通しの単なる接触ではなく、各集団が協力しなければ解決できない「上位目標」を与えることが効果的であると証明されたのです。

 

今回は前編としましたので続きは後編で記載します。

 

 

(本の感想)抗認知症薬の不都合な真実 長尾 和宏さん 東田 勉さん

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■著者について

長尾和宏(ながおかずひろ)
医療法人社団裕和会理事長・長尾クリニック院長。医学博士。1984年、東京医科大学卒業後、大阪大学第二内科入局。95年、兵庫県尼崎市で開業。複数医師による外来診療と在宅医療に従事。日本慢性期医療協会理事、日本ホスピス在宅ケア研究会理事、日本尊厳死協会副理事長、エンドオブライフ・ケア協会理事、抗認知症薬の適量処方を実現する会代表理事関西国際大学客員教授、日本消化器病学会専門医、日本内科学会認定医など。
著書に『平穏死・10の条件』(ブックマン社)、『その医者のかかり方は損です』(青春出版社)、『認知症の薬をやめると認知症がよくなる人がいるって本当ですか?』(現代書林、共著)など多数。


東田 勉(ひがしだつとむ)
1952年、鹿児島県生まれ。國學院大學文学部国語学科卒業。コピーライターとして制作会社数社に勤務後、フリーライターとなる。2005年から07年まで、介護雑誌『ほっとくる』(主婦の友社、現在は休刊)の編集を担当。医療・福祉・介護分野の取材や執筆多数。著書に『認知症の「真実」』『親の介護をする前に読む本』(いずれも講談社)がある。

 

■本書の概要

認知症の薬は本当に効いているのか?認知症は治るのか?

昔はボケといわれ今は認知症という呼び方になっています。私も過去に認知症の本の感想を書いていますが 認知症とは「認知機能の変化に伴って暮らしの上で支障がある状態」のことです つまり、症状ではないのでそのことは本人にしかわからず、想像するだけで本人の苦しみは計り知れません。もちろん認知症にはなりたくないと皆が思い認知症だと診断されれば少しでも進行を遅らせたいと願い、または直したいと思うのは同然です。本書はそんな認知症の薬についての真実が治験のデータのエビデンスによって記載されています。専門的な用語も解説されておりページ数も少ないので読みやすい本になっています。

 

kazu0000.hatenablog.com

 

■本の感想

1.2018年「フランスのニュース」の衝撃

2018年6月1日フランス厚生省は、以下のアルツハイマー認知症の治療薬を同年の8月1日から保険適用から外すというプレイリリースを発表しました。

・ドネペジル(日本の商品名アリセプト

・ガランタミン(同レミニール)

・リバスチグミン(同イクセロンパッチ、リバスタッチパッチ)

・メマンチン(同メマリー)

フランスでは2005年からHAS(高等保健機関)という公式組織が、医療保険の適用される薬や医療技術などの臨床効果を評価しています。HASはこれらのアルツハイマー認知症薬を「保険でまかなう必要なし」と評価しました。「これらの薬を使うことで症状の緩和、死亡率の暖和、死亡率の低下といった良い結果が得られる証拠は不十分であり一方有害事象の多さは無視できない」という評価でフランスは浮いた費用は保険費をケアに回すといっています。

 

2.日本の抗認知症薬は、このままでよいのか?

一方日本ではフランスと大きく異なる抗認知症薬偏重の医療が行われています。問題のひとつは、抗認知症薬の増量規定です。1999年11月に発売されたアリセプトは、3㎎から開始して1から2週間後に5㎎にするという増量規定を設けました。2011年に相次いで発売されたレミニュール、リバスチグミンのパッチ製剤、メマリーも増量規定を設けました。これは世界に例を見ない、日本だけの奇妙なルールでした。

処方薬は、本人の年齢、体重、症状、感受性などに応じて医師が適量を勘案するべきところを、認知症医療においてのみ、医師の裁量が認められないという事態が起こりました。その後、2015年に、一般社団法人「抗認知症薬の適量処方を実現する会」が国会議員に働きかけ、厚生労働省は2016年6月1日んい「理由がはっきりしている場合は、少量投与してもレセプトをカットしないようにという事務連絡を出し、少量投与を含む適量処方が認められるようになりました。しかし、このニュースは大手メディアが報じなかったため、多くの医師は増量規定が廃止されたことを知りません。つまり「抗認知症薬は定められた期間は経ったら増量し、最高量まで上げるもの」と考える医師が少なくないのです。

 

3.もう一つの問題点

超高齢者に対する処方率の高さがあります。医療経済研究所機構の発表によると、アリセプトなど抗認知症薬の4種は、85歳以上の17%に処方されていました。また、年間処方量の約半分(47%)が85歳以上の高齢者でした。背景には、日本神経学会がアルツハイマー認知症の患者に処方するよう強く勧めていることなどが考えらます。しかし、同学会の指針は85歳以下のエビデンスに基づいたもので、85歳以上の超高齢者についてはデータが乏しいのが現状です。

事実、1998年に行われたアリセプトの臨床第Ⅱ相試験の資料を見ると、対象の欄に「80歳以上の超高齢者を除外する」と書かれています。「85歳以上の超高齢者には、なるべく薬を伝わないほうがいい。使うなら必要最低限を、期間限定で使うように」というまともな判断が、認知症医療の現場では失われています。超高齢者には用量依存的な処方を続けることは、とても危険だと言わざるえません。

 

本書ではこの後、各抗認知症薬のエビデンスの経緯を書いています。しかし4種類の代表的な治験ではアリセプト5㎎だけです。危険なエビデンス主義にあぐらをかくことなく、目の前の患者さんの適量をさぐり当てる慎重さを持つこと。逆に謙虚さを持つことそこが、認知症治療に必要なのではないでしょうか?

 

 

 

 

 

 

(本の感想)人は話し方が9割 永松 茂久さん(後篇)

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この記事は後編です。

前編は書き方御覧ください

 

 

kazu0000.hatenablog.com

 

 

7.人に嫌われない話し方

「嫌われない話し方」は「好かれる話し方」以上に重要でまずは「好かれること」より「嫌われないこと」です。

つまり、話し方の上手な人は一度人から嫌われてしまうと、その後どんなにがんばってもリカバリーが難しいことを知っていて、好かれるよりも嫌われない話かたをすることに細心の注意を払っているのです。

 

①話し上手な人は、余計な一言を言わない

ポイントは自分が嫌いであったり興味のないことでも、相手の感情に寄り添う言葉を発するのです。

例えば、「社長をすごく尊敬しているんだ」と相手がいったとします。

であれば「いいことね」と返せばいいだけです。

 

②正論は「ストレート」ではなく「変化球」で伝える

できれば相手に嫌われたくない。これは誰でも思っていることでしょう。しかし、時には、どうしても相手の誤りを指摘しなければならない場があります。

そうした時に最も気をつけたいのが「正論」の伝え方です。

「正論」が相手の逃げ場を塞いで追い込んでしまうことがあります。「正論」だからこそ真正面から言わない配慮が必要なのです。

 

たとえば、仕事で失敗をしている後輩に対していきなり正論をぶつけるのではなく「俺にも、まったく同じような経験あるよ。その時にある先輩が言ってくれたんだけどさ・・・」実際にはそんな先輩は存在しません。しなくとも架空の話しでいいのです。大事なのは相手を傷つけないように正論を伝えること。後輩の彼は頑張っている分、深く傷ついてしまいます。私の失敗談と先輩という架空の人物のやり取りを話すことで、彼は自分への非難とは取らずに話しを聞いてくれました。

 

③悩んでいる人へのポジティブアドバイスはいらない

悩んでいる相手が求めていることは「わかってほしい」「共感してほしい」であって必ずしもプラス方向に転換したいと思っているわけではありません。

アドバイスをする場合には、意見を押し付けないように慎重にしましょう。

 

④嫌われる人の話し方の共通点

「4Dワードを連発する人」

「でも」「だって」「どうせ」「ダメ」この4Dワードをよく口にする人は嫌われます。特に気をつけたいのは「でも」

「○○がすき」といったそばから「でも、あれはこうゆうところがダメだね」などと言われて良い気持ちになる人はいません。

 

つっこんだ男女関係や下ネタを話す人

ここでいう、つっこんだ男女関係とは「自分がいかに遊んでいるか」という話のことです。笑顔で「そうなんだ」と周りの人が聞いたとしても、心の中で「何?この人?あまり深入りするのはやめよう」と思われるのがオチです。わざわざそんな事を公言する必要はないのです。

特に下ネタは、最もひんしゅくを買いやすい危険をはらんだ話題です。気のおけない女性同士、男性同士では盛り上がることがあるかもしれませんが、よく知らない間柄では避けたほうが良いでしょう。

 

お笑い芸人のマネごとをするひと

「いじる」というのは「いじられる」皮も含めて、プロだけに許された高度なテクニックであると認識しましょう。素人が安易に真似をすると相手を傷つけてしまします。

 

話をまとめてしまう人

会議であれば意見をまとめて議論を終わらせる必要がありますが、飲み会やパーティーなどでは色々な人と他愛もないフリートークの場では、それは必要ありません「何を話したか覚えてないけど、あの人との時間、なんか楽しかった」と思ってもらえたら、それで成功なのです。

無理やり話をまとめたり、結論をだそうとしたりするのは野暮というものです。

 

相手の話しを奪う人

前に相手との共通点探しのメリットをお話しました。その時に気をつけたいのは相手との共通点が見つかっても話しを相手から奪ってしまわないようにするということです。

「そもそも共通点を話したのは相手にもっと話してもらうため」という基本姿勢に立ち返りましょう。

 

すぐに馴れ馴れしい口を聞く人

人は、目上であれ、目下であれ、立場が上であれ、立場が下であれ、知り合ってすぐに馴れ馴れしい口を聞く人には不快の念を抱きます

 

負け惜しみを言う人

人は自分と他者を比べる習性があります。相手は何かを成した話しをした時に「すごいな」という気持ちを抱くのと同時に、多少の嫉妬の念が入るものです。問題はそれを表に出すか否かです。素直に人を称賛出来る人は同じく称賛されます。

 

8.人を動かす人の話し方

①がんばれの使い方

頑張りすぎている人には・・・・・・・「ちょっと力を抜こうよ」

頑張ってない人には・・・・・・・・・「頑張りたくなるように」

頑張りたくて頑張っている人には・・・「未来を語る」

 

②運のいい人たちが使っている口ぐせ

日本人の一番好きな言葉をご存知ですか?それは「感謝」の言葉だそうです。

自分の言葉を一番聞いているのは自分自身です。そして自分の言葉を聞く時は、心は無意識状態ですから、その言葉がストレートに入ってきます。ですから「いい言葉を口ぐせにする」ということは、精神衛生上、ものすごくプラスの効果があるのです。

 

③「相手の立場に立つ」も練習次第で身につく

相手の「気持ちを考えて話しをしよう」よく言われる言葉です。この本でも何度もきさいされています。しかし、なかなか相手の立場に立って話すことは難しいことです。練習としてテレビで謝罪会見が行われている時に「もし自分がこの人の立場だったらどうするだろう?もしこの人が目の前にいたらどんな声をかけるだろう」と考えます。そうすると、自然に物事を自分軸だけでなく、相手軸からもみることができるようになります。

 

おわりに

会話がうまくなると、人間関係が劇的によくなります。なぜか?「話し方のスキルを上げること」=「心を磨く」ことなのです。心が変わり話し方がかわると人間関係が大きく変わります。話し方とは「口ぐせ」であり「習慣」そのものです。いかにすればいい習慣が身につけることができるか?がポイントになります。